観光客は、地域の人が毎日食べるローカルフードを食べたいもの
台湾人観光客が多数訪れる「みよしの」1号店。中央に立っているのはDummyさん
話題となった
「ぎょうざカレー」の売れ行きは25%増となった。成功の秘訣としては、「餃子」というのもポイントだ。アジア圏では餃子といえば水餃子。日本で提供される焼き餃子は日本で独自の発展をとげたもので、アジアの観光客にとっては魅力的な体験となる。
また、カレーも日本で独自の発展をしたもので、アジアの観光客にとっては魅力であり、餃子とカレーという2つの未知の体験は相乗効果を生む。これは、地域活性化のパワーワード「
コト消費、体験型消費」となるのだ。
「インバウンドの視点として、『地域の暮らしのおすそ分け』と呼んでいます。たとえば、一緒に田植えをする、一緒に神輿をかつぐといったような視点が大事なのです。観光客は、地域の人が毎日食べるローカルフードを食べたいのです」(同)
地域の人は自分たちの地域の魅力に気がつかないことが多い。また、東京からきたコンサルタントに導かれるように「時代はインバウンドだ」と、全国的な競争が激しいエコツーリズムや農泊に乗り出そうとして失敗し、疲弊する。このために重要なのはコンサルタントの視点ではなく、インバウンドの視点だ。
「過去にパリや南仏で開催された『クールジャパン』のイベントに携わった経験があり、海外に人々が日本をどう見ているかを体験的に理解しています。これらの体験は、前の会社のときに一番熱を入れていたが撤退した、苦い失敗がもとになっています」(同)
殿木氏自身も、起業してさまざまな壁に直面した失敗の連続から見出だしたのは、自らも忘れてしまっていた自分の立ち位置である、
「大好きな音楽に自分が最大限どうかかわっていくか」を中心に動くということだ。音楽業界のIT化が加速し、形は変わっても、その進化にどう自分が向き合えばいいかが見えてくるのだ。
「もともとプロのミュージシャンを目指していた私は、今では『どんな仕事でも音楽と結びつけてしまおう精神』を大いに発揮しています。音楽を嫌いな人はまずいません。
音楽を共通言語にしてプロジェクトを動かすと、予想を上回る大きなエネルギーになり、期待以上の成果に結びつくことが多々あります。新しいことに挑戦する際にも、昔からやってきたことの延長線上でやっていることを認識して、そこからブレないことが重要なのです」(殿木氏)
エコツーリズムや農泊でも、コンサルタント目線の“絵に描いた餅”だけになっていないかの確認作業が必要だろう。
<文/松井克明>
八戸学院大学地域経営学部講師。行政書士・1級FP技能士/CFP。Twitter IDは
@katsu84