家を持たず移動を楽しむ!?「アドレスホッパー」という生き方

市橋正太郎さん(左手前)

 定住先を持たず、移動しながら生活をする新しいライフスタイルが「アドレスホッピング」だ。この言葉は、島々を移動して旅をするアイランドホッピングから着想を得て作られた造語である。  その言葉の生みの親であり、アドレスホッピングを実践しているのがAddress Hopper Inc.代表の市橋正太郎氏。SNSを覗けば、常に移動している様子が伺える。神出鬼没と言ってしまえばそれまでだが、アドレスホッパーには独特の哲学や考え方があると感じている。  そこで今回は、市橋氏にアドレスホッパーとしての暮らしや生き方、今後の展望について話を伺った。

アドレスホッピングをやろうとしたきっかけ

 28歳から2年間、原宿のシェアハウスに住んでいたという市橋氏。ところが、大手企業からベンチャーに転職した頃から、肌に合わなくなってきたという。 「原宿のシェアハウスに住んでいたものの、住人同士で映画鑑賞したり、料理をしたり…。とても楽しかったが、ゆっくりしすぎていたというか自分の環境には合わなくなり退去することにした」(市橋氏)  当時は、大手企業からベンチャーに転職し、年収が下がっていた。そこで居住費をできるだけ抑えたいと考えたという。さらにその上で、平日は仕事に集中し、休日は海のそばで過ごすなど、フレキシブルなライフスタイルをしたいと考えた結果、AirBnbで住むことに行き着いた。 「会社の近くで車中泊することなども考えたが、駐車場代が高く、また駐車できない可能性がある。賃貸、シェアハウス、購入など住み方はいくつか選択肢があるが、民泊が合法化される前で、物件が多くあったため、まずは実験的にAirBnbで生活をしようと思った」(市橋氏)  コストを抑えつつ、自由なライフスタイルを送るために、AirBnbを使って転々と生活する。これが、アドレスホッピングの始まりだと市橋氏は話す。  定住先を持たず、今日泊まる宿を求めて移動するライフスタイルは、新R25編集部の目に留まり、記事として紹介される。それがきっかけで世間に知られるようになったという。 「新R25で取り上げられた後、同じような生活をしている人から連絡が来るようになりました。定住先を持たず移動生活を送っている人が意外にも多くいることに気づき、コミュニティとして形成できないか考え始めました」(市橋氏)  市橋氏個人が取り上げられる中、個ではなく群として世に示すことはできないか。移動しながら生活することに名前を付け、1つの集合体を作ることで世の中の理解を得たいと考えたのだという。  その結果、アドレスホッピングナイトというイベントを開催するに至り、自分以外のアドレスホッパーが集まる場を定期的に開くきっかけになったと市橋氏は語った。 「アドレスホッピングはイベントを始める際に考えた言葉。的を得たポジティブな表現としてしっくりくると思って、皆で考えて名付けた。第1回目は想像以上に人が集まり、このコミュニティが盛り上がる予感を抱いた」(市橋氏)  毎回メディアの取材が入るほどコミュニティが盛り上がり、個人ではなく1つのライフスタイルとしてみられるようになった。

カルチャーとして定着させるため、会社を設立

 イベントを繰り返すうちに、移動生活がもたらす価値やその可能性に気づき、もっとアドレスホッピングをカルチャーとして定着させたい。そう考えるようになっていった。そしてついには会社化を決意する。 「移動生活に社会的な意義を見出し、アドレスホッピングという生き方自体を1つの選択肢として世の中に提案する。社会の中で役割を持たせ、存在価値を示していきたいと思うようになった」(市橋氏)  アドレスホッピングを実践する中で、多様性が生まれる、人との繋がりができる、価値観が広がる。お金ではなく、新しい社会関係資本(ソーシャルキャピタル)が得られることを、日本のカルチャーとして根付かせたい。  これが、今の市橋氏の活動のバックグラウンドにある根底の考えだ。
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アドレスホッピングを継続するコツと向いている人とは?
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