「俺は命を張ってでも反対する」カジノ誘致と闘う覚悟を示した“横浜のドン”

私は港湾人として、ハードパワーと闘う

「菅氏=ハードパワー」という断定は避けたものの、「菅官房長官は安倍首相の腰巾着。安倍首相はトランプ大統領の“腰巾着”」と指摘することで、米国に「NO!」と言えない安倍政権が横浜へのカジノ誘致を引き起こしたということを匂わせたのだ。  菅氏官房長官は、藤木氏の盟友(“兄弟分”)である小此木彦三郎・元建設大臣の秘書を10年以上務めた。その後、横浜市議を経て、国会議員から官房長官にまで登り詰めた。藤木氏は菅氏の「後見人(育ての親)」に等しい存在で、両者は「師匠と弟子」のような関係を続けてきたともいえる。  しかし今や菅氏は、藤木氏が命がけで阻止しようとするカジノ誘致を推進する側に回り、第二の故郷・横浜を米国カジノ業者に“献上”する役割を演じようとしているのだ。「寂しいよ」と漏らす藤木氏に、米国の鼻息をうかがってばかりの安倍政権についての質問を続けていたところ、冒頭の「徹底抗戦宣言」が飛び出したのだ。 ――名前は省いて、構造的なところだけ教えていただきたいのですが。トランプ大統領は(米国カジノ業者の)「ラスベガス・サンズ」のアデルソン会長(※)から莫大な献金をもらっている。そのラスベガス・サンズが「横浜に進出する」と表明した。そういうアメリカの意向を受けて日本政府がなかなか反論できず、これを「ハードパワー」として推し進めているのではないか。こういう構図と理解していいのでしょうか。 藤木会長:「うん」と言ったら、オレが言ったことになってしまうからね。オレは命を張ってでも反対するから。自分でできるのはそれだけだ。後は、市民の皆さまがどうするかはまた一人一人違う。私は港湾人として、ハードパワーと闘うつもりでいるよ。 (※)筆者の過去記事では、トランプ大統領とアデルソン会長の関係をレポートしている。

「横浜に巨大ギャンブル施設はつくらせない」という思い

林文子市長

2017年7月の横浜市長選で「カジノは白紙」と言って当選しながら、その後誘致表明をした林文子市長

 藤木氏は、23日の講演でこう振り返った。 「カジノの問題が出始めた頃、私は官房長官の菅さんに電話しました。『議員会館の自分の部屋に20分、時間を作って来ていてくれ。俺が行くから』と言って2人きりで話して、カジノに対する私の態度表明をしました。  私は『カジノ反対だよ。博打だから』と言った。私の友達が(博打で)おけらになったのがいっぱいいるから。だけれども最後に『(カジノを)やるならオレがやるよ』と言ったら、彼は『はい』と言いました。さらっとした会話で、意思の疎通をはかっておいた」  当初は菅氏と同じカジノ誘致賛成派であったという。その理由についても語った。 「我々の足元に、依存症で苦しんでいる人がいっぱいいる。子供が苦しんでいる。私自身が社会福祉法人を(経営)している。だから、そういう人たちの生々しい話、お母さんがパチンコ屋に入り浸りで、お父さんは酒を飲んで何かあったら機嫌が悪くて引っぱたかれる。家にいられないから逃げて(施設で)暮らしている。そういう家庭の方が足元にあることを知らなかった」(藤木氏)  依存症学会の会長を呼んで勉強会を開いた藤木氏は、「旦那が(ギャンブル)依存症でダメになり、自分自身も依存症になって惨めになる。こんなひどいものはないのだ」といった生々しい話を聞いていくうちに、「えらいものが横浜に来てしまうぞ」と思って、カジノ反対へと考えを変えたという。  藤木氏は「気が変わるのは得意だけれども、これ(カジノ)だけは二度と(やると)言いませんから」と断言した。  そして藤木氏は「カジノは『秒殺』、『秒で殺す』。楽しんでいる暇はないそうです。何億円というお金をかけても、一瞬・一秒でオケラになってしまう」とカジノの恐ろしさを伝える側に回った。  集会の最後に藤木氏は、世界中の情報が集まっていることを参加者に明かした。「世界の反応をちゃんと取っています。この横浜の反対運動に、各国の関係者が拍手しています。私は毎日毎日、張り合いがある。皆さん、よろしくお願いします」
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動き始める横浜市民や地元政治家
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