冒頭の事例に陥ってしまうリーダーに対しては、決して説明のフレーズを盛り込まないで、純粋に素朴な質問だけで相手と対話するという反復演習を15分実施してもらう。「Aという考えなのではないか?」と決めつけてしまうかわりに、「考えを聞かせてくれますか?」と質問するのだ。
「Bというように思っているのだろう?」と言うかわりに、「思っていることを何でも言ってくれますか?」とだけ、問いかける。「Cと考えているとすれば、こうしてほしい」と指示するかわりに、「どんな考え方でも、考えの途中でも結構なので、気にかかっていることを共有してくれますか?」とだけ聞く。
こうした質問を繰り出すことだけを実施していくと、「相手の考えを聞こう」という意識が高まり、「良い悪いで相手を決めつけないでいよう」という意識に至り、「相手を尊重しよう」という意識が生まれることがわかっている。行動が意識を変えるのだ。
難解なリーダーシップ理論を学ぶ必要も、理論書籍を読破する必要もない。何度理論を学んでも、何冊理論書籍を読破しても、頭ではわかっても意識は変わらず行動に移せないのであれば意味はない。
逆に、まったく理論を学んでいなくても、一冊も書籍を読んでいなくても、最初は意味がわからなくても、パーツ行動を実施できるということの方が意味がある。そしてその結果、意識が変わり、変革が生まれるのだ。
質問:相手の考えていることがわからない場合はどうすればよいか
相手の考えていることに触れてから、自分の考えを話すといっても、相手の考えていることがわかりません。相手が考えていることがまったくわからない場合や、相手の考えていることが推察できない場合は、どうすればよいのでしょうか?
確度が低くても、「たぶん、このように考えているに違いない」「おそらく、このように考えているはずだ」というように見当をつければよいのでしょうか。
回答:相手に考えを聞き、リアクションして、自分の考え方を伝える
相手の考えていることがわからない場合は、当の相手に聞いてみることが一番です。つまり、相手に考え方を聞く、相手の考え方に対してリアクションする、自分の考え方を伝えるという3段階のステップをとればよいのです。
それをやらないで、自分の言いたいことを言うだけだったり、勝手に「相手はこう考えているはずだ」と決めつけて話しはじめたりしてしまうと、無用な対立が生じてしまうのです。
そして、相手の考え方を聞くということ自体が、相手を巻き込むことに絶大な効果があるのです。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第154回】