名門「モータウン」設立60周年。BJ・ザ・シカゴ・キッドが語るソウルの今

現代にも受け継がれるモータウンサウンド

 スティーヴィー・ワンダーやジャクソン5など、後世に残る名アーティストを数多く輩出したレコードレーベルのモータウン。ソウル・R&Bミュージックの金字塔として名高いモータウンは今年で設立60周年を迎える。  設立当初から脈々と受け継がれてきたモータウンサウンド。1960年~70年代にかけて発表されたグルーヴィーでソウルフルな楽曲は、時代を超えてアーティストに影響を与えている。その一人が気鋭のソウル・シンガーとして注目を集めるBJ・ザ・シカゴ・キッド(以下キッド)だ。  ソウル・R&Bのオーセンティック(伝統的)さを抑えつつも、ポピュラーミュージックとして昇華させる音楽性が高く評価されているキッド。  先月にはニューアルバム「1123」をリリース。新作アルバムを引っさげて8月27日に東京、8月30日には大阪で来日コンサートが行われるなど、これからのモータウンを支える存在として着実に成長し続けているアーティストだ。  そんなキッドの来日に合わせて、8月28日にはモータウン60周年を記念したトーク・イベントがビルボードカフェ&ダイニングにて開催された。  日本のヒップホップ・シーンを牽引してきたRHYMESTER(ライムスター)のDJ JINを交えて、モータウンの功績や、音楽シーンに与えた影響、おすすめのモータウン楽曲などについて語った。

ソウルミュージックのルーツこそ、音楽の原点

 キッドは、2014年にモータウンと契約。それ以前は、アンダーグラウンドで活動してきたため、音楽性を認められたことを誇りに思うと述べた。 「父からモータウンについて色々教えてもらい、中でもスティーヴィー・ワンダーに影響を受けている。偉大なレーベルと契約できて嬉しいし、ソウルミュージックのバイブスを感じてもらえるように、今後もありのまま自分の音楽を表現したい」(キッド)  ソウルミュージックの持つ魂を揺さぶられるような感覚。60年代から70年代にかけて全盛だった音楽だが、キッドは伝統的なものを抑えつつも、ポピュラーミュージックとして受け入れられるように工夫しているという。  楽しくてエネルギッシュな音楽を届ける。音楽を通じて、映画を見ているような感覚を提供する。これが、現代モータウンを代表するソウル・シンガーの真骨頂なのだろう。 「ソウルミュージックの継承者が少ないのは、ソウル(魂)に歌える権利を与えられていないからだと思う。ソウル自体がシンガーを選ぶものだと。光栄にも私はソウル・シンガーの役目を担うことができた。この音楽の素晴らしさを伝えていきたい」(キッド)  ソウルミュージックは特別なもの。黒人への人種差別などの歴史的背景から、民族意識高まる感情を歌詞に込め、音楽で表現する。これが、ソウルミュージックの源流である一方、現代のリスナーでも聞けるよう、アーバンさを兼ね備えた音楽に仕上げているとDJ JINは語った。 「キッドの来日コンサートを見させてもらったが、どれだけ音楽が好きか伝わってきた。クリエティブな視点を持ち、ソウルミュージックをベースに自分の音楽を追求する姿勢が垣間見えた」
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モータウンとの出会いと音楽シーンに与えた影響
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