SRBMは、名の通り近距離から撃たれますので、
飛来時間は8分未満であり、「探知」、「追跡」、「軌道分析」、「脅威判定」、「意志決定」、「命令」、「命令伝達」、「迎撃」というプロセスに使える時間がたいへんに短いのです。MRBMですと10分前後、IRBMですと15分程度、ICBMで20〜50分程度とされ、対応時間は長くなります。
イスカンデル系であるKN-23の場合、SRBMとしてはたいへんに高速となるM6〜7の速度とされますが、仮に速度をM5〜6程度と保守的に見積もっても飛来時間は
5〜6分前後となります。
2016年11月23日に発効した
日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)が機能していた一昨年の事例で、
Jアラート(全国瞬時警報システム)によるミサイル警報は、発令までに4〜5分ほどを要していますので、
仮にJアラートを発令してもそれは着弾とほぼ同時かその後となり、あまり役に立ちません。しかも
安倍・河野外交の稚拙な大失敗により、GSOMIAは発効後わずか5年でまもなく失効する見込みです。このことについては後日筆を改めて論説する予定です。
このことは、迎撃の難しさも示しています。
現在からこの先当分の間、
KN-23を迎撃できる可能性があるのは点の防御を担うPAC-3のみですが、迎撃命令が的確に届き、迎撃できるかは分かりません。また、PAC-3でのKN-23の迎撃はこれから配備が進む改良型を持ってしてもきわめて難しいとされています。そして例えばSM-6の弾道弾迎撃機能の開発と配備が進行したとしてもKN-23には迎撃妨害能力などの未確認の機能や発展余裕があります。
弾道弾防衛においては常に日進月歩の競争となりますが、この競争は攻撃側が圧倒的に有利かつ安価であることがまさに目の前で展開されています。しかも、攻撃側が常に先んじているのが現状です。
今回、実際に弾道弾の着弾が及ぼす効果を、比較的情報開示がなされている原子炉を一例として解説しました。これによって、
軍民を問わずKN-23の直撃に耐えられる建造物はないことが明らかになったと思われます。そしてKN-23の驚異的な命中精度によって個別目標の狙い撃ちを現実のものとしており、
90年代の時代遅れの情報を元に「北朝鮮のミサイルなんてあたらないぜギャハハハハ。」というレイシズム(人種・民族差別主義)をその根本に持った見当違いの幼稚な発言が否定されたと考えます。
次回は、GSOMIA失効問題を含めて、安倍・河野外交の失敗が日本の弾道弾防衛に及ぼす影響について概説したいと思います。
『コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」』ミサイル防衛とイージス・アショア14
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<文/牧田寛>

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まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについての
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