市民を欺くデータでカジノを誘致し、この美しい街並みを汚していいのだろうか?
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前回記事では2019年9月3日の本会議 議案質問におけるカジノ増収効果に関する質疑に着目したが、今回は9月6日の本会議 一般質問で立憲民主党・萩原隆宏市議の質問によって発覚した横浜市のデータ捏造問題に着目したい。
データ捏造が発覚したのは、8月22日に林文子市長が記者会見でカジノ誘致を表明した際に用いた、「横浜市の現状と課題」と題した会見資料の2ページ目(画像1参照)の数字。
横浜市を訪れる観光客は日帰り客も宿泊客も消費額が他の都道府県に比べて少ないという結論、その根拠となる数字が表形式で記載されている。表の中身は、日帰り観光客が占める割合、日帰り客と宿泊客それぞれの観光消費額が、3つのエリア(日本、東京都、横浜市)に分けて記載され、エリア毎の数字が横並びに比較されている。
画像1を見て、この表には不審な点があることにお気づきだろうか?
もとの資料、
横浜市長 定例記者会見資料「IRの実現に向けて」に記載されたこの表には
出典の記載がないのだ。
それもそのはずで、実はこの表は
条件が全く異なる2つの調査結果をあたかも同じ条件で調査した結果であるかのように1つの表にまとめている。
この表の出典は数値の整合性から判断すると、日本と東京都のデータは観光庁が調査した
「旅行・観光産業の経済効果に関する調査研究 2017年度版」。横浜市のデータは横浜市が調査した
「平成29年度 集客実人員調査及び観光動態消費動向調査報告書」だと筆者は考えている。(*以降、前者は「観光庁調査」、後者は「横浜市調査」と記載する)
そして、この
2つの調査は、消費金額の定義、調査時期、調査方法など、あらゆる面で異なっており、横並びで比較できるような数字ではない。
そこで本記事では、萩原隆宏市議が林市長への質問で指摘した点を踏まえ、出典元と思われる上記2つの調査報告書を確認した結果をお伝えしていきたい。
まず、2つの調査の違いを現時点の筆者の理解で整理した結果を表1に示す。
<表1>観光消費額データの「作為性」
観光庁による「日本・東京都のデータ」と横浜市による「横浜市のデータ」では、
観光消費額の計算範囲や調査時期が異なっている。表1を見ただけで、横浜市調査が観光庁調査よりも少ない数字が算出された理由はお分かり頂けるだろう。この2つの調査で共通点をあえて挙げるとすれば、対象年度(共に2017年度)しかないという有様だ。
これらについて詳しく見ていきたい。