クランデスティナのデザイン(左)と、ZARAのデザイン。画像はクランデスティナがInstagramにアップした動画より
ZARAがまた他社のデザインをコピーしたことがスペインメディアで話題になっている。
その対象とされたのは公営企業が溢れる中で民間零細企業として頑張っているキューバのアパレル企業の3つのシャツにプリントされた標語であった。「Actually, I’m in Havana」、「Se acabó el drama」、「País en construcción」の3つである。それをZARAは「Mentally I’m in Havana」、「Delete the drama」、「Under Construciton」という標語に変えてシャツにプリントしたのである。
コピーの対象にされたキューバの企業名は
「クランデスティナ(Clandestina)」。スペイン人レイラ・フェルナンデスとキューバ人デザイナーイダニア・デル・リオの二人が2015年に設立した企業。日常生活必需品の不足、運送手段も未発達、ネットは勿論不十分といったキューバにおいて、デザインのプリントも手仕事で自社工房で行っている。そんなハンデを背負いながらも頑張っている企業だ。(参照:「
El Mundo」)
2017年末からはネットで米国でも販売されるようになってからキューバのアパレル企業として初めてヴォーグ誌でも取り上げられた。生産している商品はアパレル以外にバッグ、財布、飾り物などがある。企業スタッフは27名で2017年からはネットで2万人の訪問者を記録したそうだ。彼らの商品デザインは99%キューバ人によるものだという。(参照:「
Diario de Cuba」)
キューバにはZARAのショップは存在しない。しかしクランデスティナが自社のデザインをZARAがコピーしたというのを知ったのは彼らの顧客がそれをスペインやメキシコのショップで見かけたと彼らに通報したからであった。
当初、クランデスティナではそのようなこともあるだろうという考えでいたそうだ。しかし、ZARAのアパレルに「Mentally I’m in Havana」という標語がプリントされたのを見るにつけ「私に火が付いた」「ハバナをベイルートとでも変えることをせずにだ」と語ったイダニアにとって、丸っきりの物まねだと彼女は感じたという。
クランデスティナのメンバーは社会主義の国で制約も色々とあり、精神的にもハンデを感じながら思考している。それを強調する意味で敢えてハバナにいるということを表現したのであった。それをZARAは最初の「Actually」を「Mentally」に変えただけで意味するものは同じだ。なんの思想もない、単なる模倣の文言なのは明らかだったとクランデスティナのメンバーは感じたという。
これまでもZARAが他社製品をコピーした事例は、39ケースにも上るという。(参照:「
Magnet」)
訴訟も起きており、Diesel、Viktor&Rolf、Maison、 Margiela、Marniなどを傘下に持つ企業グループOTBはコピー訴訟で昨年ZARAに勝訴した。
しかし、零細企業クランデスティナにはZARAのような巨人を相手に法的に訴える手段も資金も何もない。