だが、韓国人観光客の激減で窮地に晒されているのは対馬以外の九州の都市も同様だ。佐賀県では過密状態の福岡空港にかわる九州の玄関口となることを目指して佐賀空港の整備を進めていた。佐賀空港と、ソウル・釜山を結ぶ路線は2018年度で利用者数12万5104人。国際線の6割近くを占めていた。しかし、路線を運行するティーウェイ航空は8月をもって運休を決めた。
佐賀県でも韓国人観光客は観光業の柱となってきた。福岡空港や博多港から入国した韓国人観光客は福岡市で買い物。佐賀県各地の温泉地を楽しむというのが定番の観光ルートになっていたからだ。観光庁の統計では2018年度には外国人宿泊者数約39万人のうち、約20万人近くを韓国人観光客が占めてきた。かつては色街として栄えたものの、低迷が続いていた佐賀県の嬉野温泉は、これによって回復を見ていた。
「5月頃までは前年に比べて1割程度でしたが、7月に入ってから目に見えて減少しました。ホテルや旅館からは予約が入らないとかキャンセルが相次いでいるという声も聞いています。半数まで減るとして10万人ですので、これをほかの国からの観光客や国内需要で満たせるかどうか。切り替えてやっていかないと先が見えません」(佐賀県観光課)
対馬を除けば、九州へやってくる観光客は福岡空港か博多港を経由する。そのため福岡市は近年でもっとも韓国人観光客が増加した都市になっている。その数たるや2013年には52万6000人だったのが2018年には158万5000人。
「天神ビッグバン」など大規模な再開発計画が進み、経済は絶好調の福岡市だがその背景には韓国を中心としたアジアとの連携が強化されてきたことがある。そこで、福岡市にも観光客の動向を尋ねようと電話したのだが「担当者から連絡させます」といったっきり、連絡はなかった。いま、目に見えて減っているなどと発言すれば不都合があるということなのだろうか……。
出口の見えない日韓関係の悪化。観光業だけではなく、好調だった九州経済をも窮地に追い込んでいる。
<取材・文・撮影/昼間たかし>
ひるまたかし●Twitter ID:
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ルポライター。1975年岡山県に生まれる。県立金川高等学校を卒業後、上京。立正大学文学部史学科卒業。東京大学情報学環教育部修了。ルポライターとして様々な媒体に寄稿、取材を続ける。政治からエロ、東京都条例によるマンガ・アニメ・性表現規制問題を長く取材する