ボトムアップのリーダーシップは100やれというところからスタートしない。「リーダーが言ったとおり寸分の違いもなく100やれ」という考え方ではなく、メンバーの思った方法で、メンバーの考えた進捗方法で、メンバーの知恵や工夫を取り入れて取り組みをしていくので、リーダーのやり方には合致しない部分があるため、リーダーのやり方100に対して70からスタートするというイメージだ。
しかし、メンバーは自分の考えた方法や進捗の仕方で取り組めるので、意欲が上がり、能動性が上がり、やり遂げようという決意が高まる。その結果、70ではなく、80、90といった成果が出やすくなる。
成果を出したい、反転させたいと思ったら、トップダウンの指示・命令に固執しないで、やり方を変えてみればよい。そのためには、トップダウンのリーダーシップの具体的な行動や話法の繰り出し方をわかっていなければならないし、いつでもすぐに繰り出せるように身につけている必要がある。
そして、なによりも肝心なことは、トップダウンとボトムアップとでは、リーダーがもつ許容範囲が大きく異なるということだ。ボトムアップのリーダーシップを発揮するときには、リーダーは実行の方法や進捗のさせ方について、リーダーは許容範囲を持っていなければならない。その許容範囲のなかで、メンバーに選択をさせて実施させる。
言い換えれば、許容範囲を持ちたくなかったり、持てないのであれば、トップダウンのマネジメントを発揮すればよい。そうでなければ、ボトムアップのリーダーシップを繰り出すことがお勧めだ。
質問:巻き込み型リーダーシップでパフォーマンスが上がるのか
巻き込み型リーダーシップで、パフォーマンスが上がるのでしょうか。トップダウンで、徹底して管理したり督励したりしたほうが、パフォーマンスが上がるのではないでしょうか。
回答:巻き込み型リーダーシップのほうがパフォーマンスは上がる
トップダウンにより、上司や先輩がやらせたいことが100だとします。「こうしろ」「ああしろ」「このとおりやれ」「ああしてはだめだ」というように、やらせたいことを押しつけた結果、部下や後輩の成果が60だったとします。
トップダウンで押しつければ押しつけるほど、相手は「そんなことは無理だ」「自分にはできない」というように抵抗感を持ってしまいがちですし、反対意見は解消されていませんから意欲は高まりません。
一方、ボトムアップの巻き込み型リーダーシップで、部下や後輩の意見をふまえて方向性を打ち出すとします。上司や先輩がやらせたいことは100だったとしても、部下や後輩の意見をふまえますから、70に変更になったとします。
押しつけられてないので抵抗感は小さく、部下や後輩の意見が反映されていますから、やり遂げることの意欲も高まります。結果として、巻き込み型リーダーシップのほうが、成果が高まるのです。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第152回】