元データが根本的に誤っていたイージス・アショア適地調査
すでに報じられていますが、イージス・アショア適地調査において、防衛省では
GoogleEarth Proを用いて二点間の断面図を作り、それから仰角を求めていました。
問題は、一般に地図において断面図を表示する場合、垂直(高さ)の数値は水平(距離)より遙かに小さくなるために視覚化しやすくするために高さ方向を数倍から10倍誇張して表示することが殆どである点です。
例えば、東京都心から日本最高峰の富士山を見るとき、その距離は約100kmですが、富士山の標高は3776mですから、約4kmしかありません。ここで富士山から東京のお台場までの断面図を作ってみましょう。国土地理院が無料公開している地形図に断面図作成の機能がありますのでだれでも出来ます。
図を見れば明らかですが、縦軸横軸が同一縮尺ですと断面図はペッタンコになってしまい、起伏が殆ど分かりません。このため一般に縦軸を8倍前後に強調します。こうすると見えなかった多くの起伏が見えるようになります。視覚的にとてもわかりやすいのですが、例示したものでは縦軸は横軸の8倍強調されていることを忘れてはいけません。尤も、縦軸の単位はmで、横軸がkmですから、簡単に気がつくことです。
次に男鹿半島の秋田国家石油備蓄基地を例にとります。
これも図を見れば明らかですが、高さと距離が同一縮尺ですとペタンコで情報が見えません。数値情報は同じなのですが、視覚的にわかりやすくするためにこの場合も標準で高さ方向を8倍程度に誇張した図面が出力されますし、その方がわかりやすいです。
高さ方向の縮尺は自由に変えられますので、お好みの仰角にすることは可能です。図面での仰角を15°にしたいのなら高さ方向を4倍程度に誇張すれば良いでしょう。
いずれにせよ、これは適地評価の元となるデータが誤ったものであって適地評価そのものが全く無意味となります。
またGoogle Street Viewで秋田石油備蓄基地から最大仰角となる本山方向を見てもペタンコの山が地平線上に張り付いているだけで、とても見かけ仰角が15°を超えることはないと一目で分かります*。
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google street viewによる秋田国家石油備蓄基地からみた西北西方向>
もちろん直近に超高層建築が建設されるなどの事態もあり得ますから、最終的には実地調査、測量を行わねばなりませんが、その前の図面調査の段階で秋田国家石油備蓄基地からは全方位に仰角10°をこえる遮蔽物がないという結論は出せます。
ではどうすれば良かったのでしょうか。
実は、中学生でも出来るのです。