子どもは自分が行使できる意見表明権を理解しているか?
今年6月19日、児童福祉法などの改正案が参議院本会議で可決、成立した(一部を除き、2020年4月から施行)。
この改正が画期的なのは、「児童の意見表明権を保障する仕組みの構築その他の児童の権利擁護の在り方について、施行後2年を目途に検討を加え、必要な措置を講じるものとする」という内容が入った点にある。
21世紀になっても、日本では子どもの権利を守るという文化が育っておらず、ざっくり言えば、「大人が保護してやるから子どものおまえは黙って従え」という隷属を今日も子どもに強いている。
しかし、日本政府は「児童の権利に関する条約」(子どもの権利条約)という国際条約に1994年4月に批准しており、同条約の第12条にはこう書かれているのだ。
1 締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。
2 このため、児童は、特に、自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の手続において、国内法の手続規則に合致する方法により直接に又は代理人若しくは適当な団体を通じて聴取される機会を与えられる。
今回の改正は、批准から25年も経ってようやく法律に盛り込んだことになる。その間、どれだけ子どもの権利が関心を持たれず放置されてきたかを考えると、恐ろしい。
親の暴力を学校に報告していたのに亡くなった野田市の小4女児
その恐ろしい現実を端的に示す事例として、多くの市民にとって記憶に新しいのは、今年1月に千葉県野田市で起こった小学4年生の女児の虐待死事件だろう。
この子は、親から暴力を受けている事実を学校にハッキリと表明していた。
なのに、学校も教育委員会も児童相談所も当該女児の意見を軽んじ、彼女は自宅へ戻されて殺されてしまった。
親権者として適切とはいえない親から親権をはく奪することが容易ではなく、一時停止するにも時間がかかれば、一番弱い立場の子どもはいつまでも虐待され続け、救われようがない。
子どもが自分の意見を表明し、大人に考慮される権利は、被虐待児だけでなく、貧困の子どもにも保証されるが、当事者の子どもにこの法律の意義は十分に理解されていない。
アニメ映画『天気の子』では、中学生と小学生の年齢の兄弟だけでアパートを借りて暮らしていた。だが、彼らは2人だけの生活を守るために、児童相談所による保護を恐れて、あわててアパートから逃げ出した。
親権者がいないために、まともな職場に雇われることが法的に許されない姉は、あるビジネスで起業し、生活を維持しようと試みる。実は、彼女と同じように、たとえ親に虐待されても児童相談所の世話になりたくない、あるいは児童養護施設や里親の元で暮らしたくない子どもは、少なからず実在している。