引きこもりの社会復帰を促進するさまざまな支援団体の取り組み
山奥の竹林を平地にして農地を造るプログラムが人気。「大変だけど、利用者に0から1をつくる楽しさを知ってもらいたい」(吉田氏)
引きこもりの数が増加し、ますます社会問題化する一方で、彼らの社会復帰を支援する団体も存在する。不登校やニートを中心に支援をする自立支援施設「NPO法人MIRAI(ミライ)」もその一つだ。施設では自立を促す取り組みがあると講師の吉田将史氏は説明する。
「MIRAIの寮は都会の喧騒から離れた千葉の成田空港近くにあります。現在の入寮者は15人で、プログラムの質を維持するためにおおむねこの人数を保っています。内容は掃除、洗濯、炊事といった家事指導から、農業、職業体験まで。共同生活を行うことで自立心の向上を促し、労働して報酬を得る経験をすることで社会復帰後に働く自分をイメージしやすくします。20代が中心ですが、40歳前後の入寮者もいますね」
施設職員と話し合い、社会復帰できると判断すれば卒業する仕組み。職業あっせんもあり、卒業後は定職に就く人も多いという。
もちろん「接客」のハードルは高く、最初からうまくはいかない。毎日その日の出来事を振り返る時間を設けてケアしているという
厚労省が運営する就労支援サイト「地域若者サポートステーション」と連携して、パン作りやDTPデザインなど、企業での職業体験を提供するのが「NPO法人文化学習協同ネットワーク」。代表の佐藤洋作氏が意義を語る。
「例えば、パンはその日の温度や湿度によっても適切な焼き加減が変わるため、おいしく作るにはスキルと経験が必要。五感を使いながら働く楽しさを改めて感じてもらうことが、職業体験の狙いです」
取材当日、驚いたのは利用者の明るさだ。「こんにちは!」と元気よく声をかけてくれたのだ。
「お客さんはスタッフが引きこもりだと知ると驚くんですよ。ネガティブに取られがちな引きこもりですが、きちんと居場所を提供すれば、元気に働きだせる人も多いんです。特に、うちに相談に来るのは、事情があって一度働けなくなったものの、就労に意欲を持っている人が多いです」