リラクゼーションスペースや娯楽道具も充実しており、学業だけでなく引きこもりの塾生たちに居心地のいい空間を提供している
3つ目に紹介するのは不登校や引きこもりの生徒が対象の大学進学塾を運営する「CARPE・FIDEM(カルペ・フィデム)LLC」。一般的な学習塾と違い、教室にはゲームやマンガなどの娯楽品や、ベッドやハンモックなど寝具も置いてあり、定期的に無料で参加できる旅行や合宿も実施している。その理由を代表の大村悠輝氏は次のように語る。
「うちは単に学力の向上よりも、協調性やコミュニケーション能力の向上が主な目的なんです。そのため、生徒同士の仲を深められるような設備の導入や、いろんなものに触れる体験ができる場所の提供を心がけています」
10代だけでなく、引きこもっていた30代が、勉強を改めてやり直し、大学進学を目指すべく入塾するパターンもあるのだとか。
「薬学部に進学した例があります。また、その他にも、国公立の医学部や早慶上智などの難関私立大学に合格する人もいますね。仲間と学びや遊びを共にし、成長していく過程が大きいと感じています」
信頼できる仲間や、働く楽しさ、生きがいを見つけることが、社会復帰への第一歩になるのだ。
職業研修はれっきとした自立支援プログラムのひとつ。だが、安い労働力としか見ていない悪徳業者もいることを忘れないで
引きこもりの支援組織が増える一方で、状況を利用した悪徳業者も生まれ、存在が問題視されている。長年、週刊誌で引きこもり問題を追い続けてきたライターのT氏は次のように語る。
「ヤツらが隠れ蓑にするのは滞在型の自立支援施設です。寮費が月15万円前後に、別途入寮費として15万~30万円。高いカネを取るだけ取って、専門家もついていません。引きこもり中年の親世代は情報収集をする手段に乏しく、言葉巧みに騙されて多額のお金を支払わされるトラブルが後を絶たないんです。なかには、初期費用+3か月分の寮費で500万円以上の契約を結ばされたケースもあります」
さらに支援プログラムの中身がなく、実質放置しておきながら、長期滞在させて寮費を搾り取ろうとする場合もあるとか。
「ほかにも、研修と称して入寮者をタダ働きさせ、労働先からの報酬は業者が全額懐に入れるのも常套手段。施設職員による虐待にも気をつけたいです」
支援団体の透明化も急がれる。
― 引きこもり中年の衝撃 ―