そもそも完全禁煙化はパチンコ店にとってはリスクの高い選択だ。禁煙ユーザーの増加が見込めるかと言えばそうでもなく、タバコの煙を嫌って足が遠のいていた客の再来店を促せるかと言えばやはりその期待も薄い。巷では「串カツ田中」が完全禁煙化を実施することにより、家族来店が増え一時は業績も上向いたように見えたが、客単価の低下や喫煙客の非来店により苦境に立たされているのを見ても、このギャンブルには乗りにくいのが現状だ。
店舗外(屋外)への喫煙所の設置にも二の足を踏むパチンコ店が多い。客がタバコを吸いに店の外に出るという行為は、客にとっては億劫なものであるし、店側にとっても離席時間が長くなることで稼働効率が低下するし、またスマホや財布、ICカード等の貴重品の置き引き犯罪の確立も高くなってしまう。駐車場が併設されているような郊外店ならまだしも、駅前立地の店舗では、屋外での喫煙も条例違反になる場合も多くある。ポイ捨て等の喫煙マナーの問題もあるだろう。
結局、パチンコ店はたとえ費用が嵩んだとしても、パチンコ店は3)の喫煙ブース設置を実施しなくてはならないという結論に達してしまうのだ。
今、大手ホールばかりではなく、中堅企業のパチンコ店に至るまで、前倒しで喫煙ブースを設置しようとする動きがある。その理由の一つは、10月1日からの消費税の増税。喫煙ブースの本体のみならず工事費も、消費税が上がる前に契約してしまいたいという考えがあるからだ。
喫煙ブースがあることをアピールすることで、集客に繋げる
もう一つの理由は、本稿を書いた理由と同じだが、パチンコ店は今後禁煙化されてもホール内には喫煙ブースが設置されていることを広く周知するため。
なぜなら非喫煙者が改正健康増進法を知らないというのは分かるが、喫煙者の中にも、来年の4月1日からほとんどの屋内施設が禁煙化されることを知らない人が多い。屋内禁煙化のことを周知することも大事だが、それ以上に商売として大事な事は、特に喫煙者が多い商売の場合、「あの店には喫煙ブースが設置されている」という認識を持ってもらうことがとても大事だ。その記憶、その認識が、禁煙化後の来店動機になるからである。
全国に1万店舗程あるパチンコ店。
客商売をしている人たちは、パチンコのユーザーであれ、非ユーザーであれ、喫煙ブースを設置しているパチンコ店を一度見学しに行くべきだ。様々な仕様の喫煙ブースがあり、その機能性や利便性、店内構造や客の動線も考慮した設置場所等、喫煙者が主だった客商売だからこそのノウハウが詰め込まれている。
来年4月1日以降、パチンコ店が喫煙者のための街の有効なインフラになるかも知れない。