憎悪を煽る為政者。米国のヒスパニック、トランプの人種差別に怒りの声を上げ始める

Latino Activists Rally At White House For Gun Background Checks Bill

Photo by Win McNamee/Getty Images

 米国テキサス州のメキシコとの国境都市エル・パソ(El Paso)で8月3日に起きたメキシコ人を標的にしたセミオートマティック銃による乱射事件で22人が殺害されたのを切っ掛けに、米国のヒスパニック移民の間で「いい加減にしろ。もう大人しくしているのは御免だ」として彼らはトランプ大統領の差別的な移民対策に正面から対抗して行く構えを見せるようになっている。  これまで、トランプ大統領は移民を嫌悪する姿勢を明らかにしており、それに挑発されてヒスパニック移民を排斥しようとする動きが米国社会の中で生まれている。

米国社会におけるヒスパニックの存在

 米国社会の中でヒスパニックが人口比で構成している割合と言えば全人口の17.9%を占めているという。それは人口にして5990万人。残りを白人が61.4%で1億9560万人、それ以外の多種民族が20.7%、6640万人とされている。  ヒスパニックの米国への移民は1970年代から始まった。同年は僅か960万人の移民者だけであった。  米国に在住しているヒスパニックの中での割合を見ると、メキシコ人が断然多く62.9%、次に中米人の9.6%、プエルトリコ人9.2%、南米人6.4%、キューバ人3.8%、それ以外の出身者8.1%となっている。  またヒスパニックが集中している都市はカリフォルニア州のサン・バーナーディーノ、ロサンジェルスそしてリバーサイド、テキサス州ではベア郡、ダラスとハリス、フロリダ州はマイアミとなっている。  メキシコの場合は米国と国境を接しているという地理的な環境を利用して貧困から解放されるべくアメリカンドリームの実現を目指して米国に移民したのである。(参照:『El País』)  しかし、投票権を持っているヒスパニックの有権者となると現在まで2900万人で、投票権を取得できる権利を持ちながら、それを実際に取得する為の事務的問題が理由でそれが容易に取得できないヒスパニックがまだ多くいるという。それでも、現在米国の全有権者の12.8%をヒスパニックが構成している。  投票日が平日に行われると、多くのヒスパニックは仕事を休んでまで投票所に向かうという容易さは持てないとされている。それでも、前回の大統領選挙では69%が民主党候補に投票したそうだ。  今年6月の時点で1007人のヒスパニックを対象にした世論調査で来年の大統領選では62.8%が民主党に票を入れる予定だという。候補者の中でバイデン21%、サンダース20%が他の民主党候補を大きく引き離している。(参照:「El Periodico」)  また将来の米国の人口構成という面から見ると、18歳未満の32.2%がヒスパニックだというのである。その一方で18歳未満の白人は19.5%だ。但し、18歳未満のヒスパニックというのは日常米語を喋って、しかもヒスパニック文化というよりも米国文化の影響受けて育っている。そのことから彼らをヒスパニックと称しても彼らのルーツがラテン系にあるということで、彼らの両親が育ったヒスパニック文化とは開きがある。しかも、彼らの内の93%は米国籍者だという。

経済的にも貢献しているヒスパニック系

 一方の企業面から見ると、米国ヒスパニック商工会議所のラミロ・カバソス部長によると、米国で活躍しているヒスパニックが所有者となっている企業は437万社あり、米国経済に7000億ドル(77兆円)の貢献をもたらしているそうだ。  例えば、「ビンボ・グループ(Grupo Bimbo)」はパン類を生産している企業で、メキシコ人が所有者で米国で70の工場を持ち現在27000人を雇用している。  同様にメキシコで生まれた企業で米国に進出しアルミの自動車部品メーカー「ネマック(Nemak)」は世界の自動車のアルミ部品の25%を生産している。  1980年代に米国に移民したオルティツファミリーはレストラン「エル・ペスカドール」を創設してチェーン化して現在2000人を雇用している。この3つのメキシコ人による米国で成功して米国の経済に貢献しているというのはほんの一例である。  州ごとに見るとテキサス州はメキシコとの依存度が非常に高く、メキシコとの取引に支障が出ると同州の40万人の雇用がその影響を受けるとされている。(参照:「Al Dia Dallas」)
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ヒスパニック系は米社会に根を下ろしているのにトランプは差別を繰り返す
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