憎悪を煽る為政者。米国のヒスパニック、トランプの人種差別に怒りの声を上げ始める

ヒスパニック系の貢献を無視して差別のみするトランプ政権

 以上のような背景を背にヒスパニックは米国に根を下ろしているのに、トランプ大統領は大統領選挙の時からメキシコや中米からの移民者は犯罪者だと呼び、今もそれを繰り返している。1970年代から米国に移民を開始し、現在まで米国の発展にヒスパニックは貢献して来た。それをトランプは今も無視してヒスパニックの存在を認めようとしない。彼らと対話を持つことなどまったくない。寧ろ、嫌悪感をもろに出している。  17歳のガブリエラ・マシアスは「もうどこに行くにも一人で行くことができなくなった。以前は誰も我々(ヒスパニック)の悪口を言う者はいなかった。以前はみんな平穏だった。しかし、今では私は怖さを感じるよういなっている」と語っているのが、まさにこれが現在の米国に在住するヒスパニックの心境だ。  米国に在住しているヒスパニックの60%はその出身地から不当に人種差別は受けたことがあると、ピュー研究所の調査でも明らかにされている。しかし、現在のように米国の大統領自らがその人種差別主義を煽り挑発するということは初めてのケースなのだ。

エル・パソの銃乱射4日後にも大規模不法移民検挙

 しかも、エル・パソでの事件が起きた僅か4日後にミシシッピーで10年以来今まになかった大規模な不法移民者の検挙を行ったのである。勿論、そこで検挙された多くがヒスパニックである。その結果、多くの子供が検挙された両親を待って学校に残されたという事態が発生した。というのも、両親が子供を学校から連れて帰るのが日課となっていたのが、検挙されたことによって学校に子供を迎えに行けなくなったのである。  メキシコ移民者を嫌悪しての乱射事件から僅か4日後に検挙が実施されたという事態を前に『女性移民の為の正義の組織』のモニカ・ラミレスはヒスパニック社会の感情を配慮することなく非人道的な行動に走ったトランプ政権を批判している。特に、それが子供の将来にトラウマとなって暗い陰をもって成長することを懸念しているからである。  そして、この事件を切っ掛けにヒスパニックの間で新たな意識改革が起きているのである。これまでのよう世間から目立たないように控え目に暮らして来たヒスパニックが自分たちの存在が米国の発展に貢献してきたことを訴える時が来たと感じているのである。(参照:『El País』)  しかし、トランプ大統領には彼らメキシコ人の活躍は目に留まらない。  トランプがこうした差別的な考えを持ち、それを繰り返し発言することによって、もともと人種差別の意識をもった過激者を挑発して不法移民者を排斥しようとして今回のような銃の乱射という悲惨な事件を起こしたのである。トランプがいつもの不法移民排斥の口上を繰り返せば返すほど今回のような事件が再発する可能性は高くなるのは間違いない。(参照:「BBC」)
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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