8050問題、引きこもり中年を抱える70代母親の苦悩
この10年で少しずつではあるが、現状と課題が可視化されてきた引きこもり問題。引きこもり中年の実情に迫るべく、当事者たちの声を拾い、現状をリポートしていく。
ツラいのは引きこもり本人だけではない。その親もまた苦しんでいる。
「部屋に完全に閉じこもって、こちらはドア越しでしか話しかけることができません。それも無視されることが多く、親子でも会話がほとんどできずにいます……」
18年間引きこもり続ける46歳の息子を持つ真山茂美さん(仮名・76歳)。実は息子は取材班記者の同級生なのだが、記者とも一切コンタクトを取ってくれないありさまで、母親の茂美さんに急きょ話を聞いたのだ。引きこもり息子は上司のパワハラが原因で28歳のときに会社を辞めて以来、自宅に引きこもったままだという。
「最初のうち私とは会話してくれていましたが、そのうち食事も自分の部屋で取るようになり、顔も合わさず、今は一切話してくれることがありません」
息子の将来を思うと募るのは不安ばかり。心配で夜も眠れない。
「78歳の主人は、ここ数年入退院を繰り返していて、私も健康に不安を抱えています。こんな状況で私たちが死んでもやっていけるのか。それが心配なんです」
ちなみに真山さんの夫は地元の名士。息子の存在を周囲に知られないように隠してしまったのも良くなかったと振り返る。支援団体に相談しようとするも夫に反対されてしまったという。
「主人に逆らってでも支援団体に頼るべきだったと後悔しています。ニュースで最近、川崎であった事件を見ていても、もしかしたら息子も同じことをやってしまうんじゃないかと、他人事に思えないんです。自分の殻に閉じこもり、心配した学生時代の友達が訪ねてきても会おうともしませんし……。社会復帰とまで言わないから、せめて挨拶だけでも構わないから何か話してほしいです」
記者も他人事ではなく、真山さんが元気なうちに、少しでも事態が改善に向かえばいいのだが……。
<将来への展望>
まずは息子の声が聞きたい。社会復帰はそのあとでいい
― 引きこもり中年の衝撃 ―
まずは息子の声を聞きたい……
息子の存在を周囲に知られないように隠してしまった
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