それでもトップダウンの指示・命令に固執すれば、成果は上がるようになるのだろうか。「100やれ、100やれ」と言い続けて、60しか成果が出ない場合に、「もっとやれ」「しっかりやれ」「徹底的にやれ」とトップダウンのマネジメントをし続けていて、成果が上がった試しがあるだろうか。
60しか成果が出ない場合に、さらにトップダウンの指示・命令をしていければ、70、80に成果が上がるどころか、50、40に低下して、手のつけられない状態になってしまう。
もちろん、なんら懸念がなく、トップダウンで成果が上がっているのであれば、継続していけばよいだろう。法律を守る、品質管理を徹底する……。こうした取り組みは、誰が何と言おうと、トップダウンでやりきる必要がある。
しかし、トップダウンのマネジメントに少しでも陰りが見えたと思ったら、すぐに、ボトムアップの巻き込み型のリーダーシップに切り替えればよい。トップダウンのマネジメントを実施しなくてもよい場面でも、トップダウンに固執してしまうと成果が上がりづらいことが実に多い。
方針を実現するための具体策を見極める場合などは、具体策を実行するメンバーを巻き込む、ボトムアップのリーダーシップを発揮すればよい。そのほうが、成果が上がるからだ。別の機会に紹介するが、ボトムアップの巻き込み方のリーダーシップの手法は、上司や先輩が簡単なコツさえつかめば、すぐに繰り出すことができるようになる。
質問:トップダウンを直す必要があるのか
トップダウンで指示するということを直す必要があるのでしょうか。上司や先輩なのですから、トップダウンで指示をすることが、そもそもの役割なのではないでしょうか? それに従わない部下や後輩に、問題があるのではないでしょうか?
回答:相手を巻き込む目的を果たせなければ直したほうがよい
指示をすることの目的は、指示をした内容に相手を巻き込んで、ひいては相手のパフォーマンスを上げることなのではないでしょうか。このことが上司や先輩の役割であると言えると思います。
トップダウンで指示した結果、相手を巻き込むことができずに、相手がパフォーマンスを発揮できなければ、上司や先輩はその役割を果たしていないということになります。
部下や後輩に問題があるかもしれません。しかし、部下や後輩が悪いと言っても問題の解決になりません。トップダウンの指示そのものをあらためればよいのです。相手を変えることは時間と労力を要しますが、それよりも自分を変えることのほうが容易なことが多いので、上司や先輩が指示の仕方を変えるということがベターです。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第150回】