万引きGメンに捕まっても、まったく表情を変えなかった少年。変化が訪れたのは……?
みなさん、こんにちは。
万引きGメンの活躍が特集されている記事や番組を観ると、決まって万引き犯の捕まえ方や怪しい行動について言及されています。今回の取材では、もちろんそうした面も伺いましたが、微表情観察スキルを持つ保安員の方は、一味も二味も、視点が違いました。それはどんな視点でしょうか。微表情研究家の清水建二が報告します。
中部地方で保安員の業務に従事されているR・Tさん(30代・男性)。保安員歴は10年とのことです。R・Tさんは、こんな出来事を話してくれました。
岐阜駅周辺の様子。岐阜を含む中部地区でR・Tさんは10年にわたり私服保安員として従事している
「書店で数十冊の漫画を万引きした中学生の男の子がいたんです。私が万引きに気付き、声をかけたら、抵抗することなく事務所に来ることに応じました。書店の責任者に本案件について説明し終え、その子に謝罪を促しました。そのときの様子が普通の子どもとは違ったんです」
どんな子だったのかでしょうか。
R・Tさんによれば、普通の子どもだったら万引きで捕まえられ事務所で大人を前にしたら不安を見せたり、動揺するところ、その子はそうした様子を一切見せず、「警察には連絡しないで欲しいです」、「(万引きした商品は全て自分で買い取ることで)責任は自分でとります」、「二度としません。約束します」と非常にハキハキと話し、大人のような口調と身振りとで交渉してきたと言います。
その子の表情は中立(何の感情も抱いていない普通の状態の顔のこと)が保たれ、平静な様子が伺えたそうです。
「反省しているのかどうかもわからない」
「警察を呼び、警察官が来るまでの間、その子から氏名や年齢、住所などを聞きながら万引きは悪いことであると諭していたのですが、『はい』『はい』と返事はするのですが、表情一つ変えないのです。話し方から頭の回転が非常に早いということはわかるのですが、感情が感じられず、こちらの想いが届いているのかわからないのです」
と、R・Tさんはその時の様子を描写します。
また、
「今までの子どもとは違って、大人びている。何を考えているのか心情がわからない。反省まで持っていくのは難しいかも知れない。」
と、そのとき思われたそうです。
そうこうしているうちに警察官が到着します。その子に対して警察官は「自分が何したかわかる?」と言いながら、氏名・年齢・住所などを聞き、R・Tさん同様その子に万引きが悪いことであると諭していたそうですが、その子は先と全く同じ様子で警察官の話を聞いていたとのことです。
このとき事務所には書店の責任者、R・Tさん、その子ども、制服警察官がいたのですが、後に刑事さんが加わることになります。刑事さんは強い口調で子どもを諭していたようです。しかし、その子は怯えたり、泣いたりすることなく、表情は中立のまま口では反省の弁を述べていたと言います。