イラン人男性が牛久入管に収容されていた時に描いたイラスト。収容所内では「東京オリンピックがらみの政策として、自分たちは長期収容されている」と憤る人が多い
7月9日。5月に最初にハンストを始めたシャーラムさんなど4人が仮放免された。だが支援団体はその仮放免に喜べなかった。
というのは、仮放免の期間はわずかに2週間だったからだ(通常は2か月程度)。
そして7月22日、驚くべき知らせが入ってきた。シャーラムさんともう1人のイラン人が2週間の仮放免を更新しようと、東京出入国在留管理庁(東京入管)に赴いたところ、「不許可」の裁定を出されてそのまま入管のバスに乗せられ、牛久入管に直行したというのだ。
仮放免者が守らなければならないルールは2つ。「就労禁止」と「居住する都道府県から外に出るときは許可が必要」ということだけだ。だがシャーラムさんはこのルールを守っている。ではなぜ再収用されたのか?
東京入管は「個別の案件には答えられない」として理由を明かさない。
7月25日、Aさん(前出)から電話がかかってきた。
「私の仮放免が決まりました。シャーラムさんたちが戻ってきたのは、私たちをビビらせるため。つまり、
入管は集団ハンストの解体を狙っています。でも逆にみんな怒っていて、ハンスト参加者はさらに増えています」
死を賭したハンストを行って仮放免されたとしても、被収容者たちはボロボロの体と精神状態で一般社会に放り出されてしまう。しかし、長すぎる長期収容を是正する手段として、取りうる手段はハンストしかないのも事実だ。
日本は「戦争のない平和な国」と思って難民申請したが……
7月24日、つくば市で記者会見を開いた「牛久入管収容所問題を考える会」の田中喜美子代表(左端)と、収容されているピロル・イナンさんの家族。田中さんの隣に座るピロルさんの長男が切々と、そしてしっかりと父への思いを語った
7月24日15時からは、支援団体の
「牛久入管収容所問題を考える会」がつくば市内で緊急記者会見を行った。そこに同席したのが、牛久入管で15日前からハンストを続けているクルド人のピロル・イナンさんの妻スナさんと3人の子どもたちだった。
この日、家族は牛久入管でピロルさんに面会した。いちばん日本語が達者な10歳のO君が切々と窮状を訴えた。
「お父さんと遊んだりサッカーをしたい。でもお父さんは帰ってきません。今日会ってもすごく痩せていて、かわいそうでした(ピロルさんは体調悪化のため、車いす生活になっている)。
学校の友だちから『お父さん、どこ?』と聞かれても、僕は恥ずかしくて何も言えません。お母さんも泣いています。入管の人たちは、こんなことを何もわかってくれません」
シャーラムさんもAさんもピロルさんも、不法就労が目的で来日したのではない。本国での差別や弾圧があったからこそ
「戦争のない平和な国」である日本で難民認定申請をしただけだ。
例えば、ピロルさんはトルコでテロリストと勘違いされ、警察で拷問を受けたこともある。彼らが難民認定申請をすることが、何年も収容するほどの悪事なのだろうか。収容するにしても、数か月にとどめるなどの措置が必要なのではないだろうか。牛久入管でのハンストは、このままでは収まる気配はない。
<文・写真/樫田秀樹>