「5月1日、“令和婚”したんです。結婚指輪はハリー・ウィンストン。タワーマンションのローンも少なくないのですが、全部トルコリラやメキシコペソのスワップで支払っています」
<トルコ+メキシコでボラを抑制可能>トルコリラやメキシコペソ単体での運用と比べ、2通貨の値動きを合成させた場合はトレンドが緩やかになる。新興国通貨で運用する際には頭に入れておこう 図版/ウエイド
幸せいっぱいの顔でそう話すのは、新興国通貨スワップ派の兼業投資家、Я(アール)氏。トレード歴は実に10年以上。今でこそ月々の住宅ローンの支払い分を稼ぎ出しているが、もともと投資を始めた動機は、いわゆる小遣い稼ぎだった。
「最初は株でした。出社時間に合わせて9時から25分間の時間限定デイトレです。でも、出社前のトレードは疲れる。FXなら24時間取引できると思い、転向しました。それが’06 年頃のこと」
当時は円キャリートレードが日本で大ブームとなっていた。高金利通貨を買っているだけで儲かった時代だ。
「資金は200万円ほど。高金利通貨が下がればハイレバで買う、それを繰り返し、1日5万円のスワップをもらえた時期もありましたが、案の定、強制ロスカットを食らってしまいました……。プロトレーダーを目指そうと転職の合間にデイトレやスキャルピングを行なったこともありましたが勝てなかった。生活がかかっている重圧で、損切りがしっかりできなくなっていたんです」
再就職してからも自動売買やトラリピのようなリピート系発注機能などを試したが、コツコツ利益を重ねてはドカンと飛ばすことの繰り返しに……。
「リスク管理重視」の方法に転換して成功トルコショックも無傷
「結局、自分が相場に張り付かないと勝てないなと。でも、会社員で四六時中張り付いてられない。それでもお小遣いが稼げるのは何かと思ったら、スワップ投資だった。原点回帰です。ただ、前と同じやり方では滅びるだけ。だから、リスク管理を徹底したんです」
スワップ投資もデイトレも経験し、苦い思いをしたアール氏だからこそ、生み出せた新型手法が「
可変型スワップ投資法」だ。
「FXを再開したのは’17年の夏。トルコリラの高金利が際立っていたので、下がるごとに買い増していきました」
当時のトルコリラは30円台。それが1年後には一時15円台まで暴落するトルコショックが起きた……。この惨劇をどう生き延びたのか?
「“退場”させられたのはレバ5倍以上の人たち。私はレバが1.5倍程度になるよう調整していたので、まったく強制ロスカットを食らうことはありませんでした。安全性を考えて、いざというときに一瞬だけ証拠金を追加してレバ1倍に引き下げられるよう、0.5倍分の資金を用意しておいたのもよかった」
スワップ派にありがちなバッドエンドは証拠金不足による強制ロスカット。レバをかけなければ、外貨預金と一緒。日々スワップ収入を得ながら、相場の回復を待つこともできる。
「スワップ派は持ち続けることが大前提。絶対に負けちゃいけない。そのためには資金配分をしっかり考えないといけません」
しかし、レバ1.5倍を上限にするだけなら単なる低レバ・スワップ投資。アール氏のユニークなところは目的の異なるポジションをつくる点にある。
「レバ1.5倍は『ディフェンシブ・ポジション』なんです。これとは別に、短期売買用のアグレッシブ・ポジションも持って、『
ポジションごとのレバ管理』を行い、リターンを増やしていきました」
通常は口座全体でレバを考えるもの。強制ロスカットが発動するのも、すべてのポジションの含み損益を合算して大幅な証拠金不足に陥ったときだ。にもかかわらず、アール氏はポジションごとのレバ管理を導入したのだ。