ハッシュタグで起こした「革命」。倉持由香が語るSNSを使ったマーケティング論<「サラリーマン文化時評」#11>

 今や常識となっているSNSを活用したプロモーション。自己プロデュースが重要なカギであるアイドル業界では、その影響力はさらに大きい。前回に続いて、当連載の著者・真実一郎がグラビアアイドル・倉持由香を直撃した。

「#グラドル自画撮り部」が生まれた瞬間

真実一郎(以下、真実):「『グラビアアイドルの仕事論 打算と反骨のSNSプロデュース術』(星海社)でも紹介されている、倉持さんが考えた『#グラドル自画撮り部』というハッシュタグは、日本SNS史に残る偉業だと思っています。事務所の垣根を越えて無料でできるプロモーションで、本当に画期的でした」 倉持由香(以下、倉持):「ありがとうございます!」 真実:「このハッシュタグを思いついた瞬間のことって覚えていますか?」 倉持:「吉田早希ちゃんと塚本舞ちゃんと3人で飲みながら、『どうしたらグラビア界はうまくいくんだろう』みたいな話をしたんです。その頃、私はもう“尻職人”としてTwitterのフォロワー数が増えていたので、『みんなで自画撮りを載せるSNSができたら盛り上がるのにね、でもプログラムできないから、だれかプログラムできる人に頼もうか』みたいな流れになったんです。でも結局、結論が出なくて」 真実:「最初はオリジナルのSNSを作ろうとしていたんですね」 倉持:「そうなんです。でもその次の日の朝、布団に入っているときに『あ、ハッシュタグがあるじゃないか』って。一個共通のハッシュタグを作って、それでみんなで自画撮りを載せれば、見やすいんじゃないか、ということを思いついて。『そうだ、「#グラドル自画撮り部」を作ろう!』って。それをそのままTwitterでつぶやいたんです」 真実:「ハッシュタグ名とかを吟味してから世に出したわけではないんですね。そのスピード感が勉強になります」 倉持:「すぐつぶやいちゃいました。なんで『部』にしたかっていうと、全国大会に向けて自主練する!部活!青春!っていう感じを出したかったんですよね」

グラドル界という畑を耕したかった

真実:「学生時代は、部活は何をやっていたんですか?」 倉持:「運動系の部活はなにもやってこなかったので、だからこそあこがれもあって。みんなで青春を過ごしたいな、という思いがありました。あと、そういう『夢に向かっている人』を応援したい、という気持ちがファンの方にもあると思うんです。  グループアイドルさんがブレイクした理由って、小さい劇場から武道館やドームに向けて頑張る、っていうストーリー性があったのが大きいので、そういうのを参考にして『部』にしたような気がします」 真実:「『#グラドル自画撮り部』は、あっというまにトレンドワードに入って大きなムーブメントになっていきましたが、倉持さん以外の子の人気が上がってしまうことに対する葛藤やジェラシーって、まったく無かったですか?」 倉持:「無いですね。私自身がスゴく売れたいというよりも、グラビア業界が盛り上がればいいなというか。グラビアが凄く好きなので、なんとか生粋のグラドルのコたちがもっと盛り上がれば、という思いが強くて。それに、私という作物の芽が出ても、畑を耕さないとすぐ枯れてしまうので、まず畑を耕すことから始めよう、という気持ちで始めましたね」
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グラドル自画撮り部の衝撃
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