妻にだけ過剰な負荷を強いる、日本の夫婦の非対称性<モラ夫バスターな日々22>

まんが/榎本まみ

弁護士・大貫憲介の「モラ夫バスターな日々<22>

 私の事務所に来て、殆どの女性相談者がする質問がある。先日も、30代の女性相談者が質問した。 「私の夫はモラ夫ですか」  聞くと、ほぼ毎日のように夫にディスられているらしい。夫は、帰宅すると、家事の不足を探して、指摘し、非難するとのことである。  まず、言わなければならない。夫にも、当然、家事、育児の責任がある。床の汚れに気付いたなら、自分で拭けばよい。その際に、妻を睨む必要も、殊更にため息をつく必要もない。汚れを見つけたから拭く、ただそれだけのことである。  専業主婦の妻が、家事育児の大半を引き受けてくれているのであれば、それを感謝するべきであって、その不足を非難するのは全くの筋違いである。

モラ夫は妻に感謝しないくせに、自らへの感謝だけ求める

 私は、数多くの結婚案件も扱ってきた。夫婦関係について悩んでいる方々の相談も比較的多い。これらの案件を扱う弁護士は極めて少数だろう。さらに多くの離婚案件も扱ってきた。  その経験から、日本の夫婦が非対称であることを知っている。  モラ夫は、妻に感謝を求める。「誰のおかげで喰えてる」と吠える夫から、オムツを替えて「俺、育児してる」と妻や周囲の称賛を求めるモラ夫まで、まるで幼児のようである。風呂を洗うと、洗ったよとアピールするモラ夫も少なくない。  他方、日本の妻の殆どは、「誰が食事を用意したか考えたことがあるのか」とは訊かない。パートに出ても、「私、○○万円稼いだよ」とアピる妻は少数だろう。仮に、そんなことをアピれば、モラ夫から、「は?何言ってんだ、偉そうなことは俺くらい稼いでから言え」と逆襲されてしまうだろう。  そして、多くの妻は、夫が働いていることをねぎらい、子どもたちにも父親への感謝の気持ちを教える。夫婦仲が悪くなっても、なお、家計を支えてきてくれたことへの感謝を忘れない妻は多い。  他方、モラ夫は、日常的に妻の家事の不足を指摘し続ける。子どもに対してまで、ダメな母親であることを言い募るモラ夫までいる。仲が悪くなると、妻への罵詈雑言は凄まじい。
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モラ夫にとって結婚とは「俺様専用の女中を得ること」
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