利用者側に限って言えば、すし詰めや長時間の遅延を見据えて、電車に乗るときは水分を持ち歩くという対応も有効だ。実際に長時間電車内に拘束された経験があるという男性に話を聞いた。
「短い距離の移動だったので、まさかという感じでしたね。途中で停車してしまい、1時間近くそのままに。空調の弱い車両だったので、車内の温度が上がり続けたうえ、混み合っていたので余計に暑かったです。降りる頃には頭痛が酷くて、熱中症になりかけていました」
動くか動かないかという問題になると、駅間の距離はもはや関係ない。閉じ込められてしまう時間には何の影響もないのだ。
また、ダイヤの乱れに対応するために、前出の境氏は次のようにアドバイスする。
「通勤でも旅行でも、複数のルートを準備しておくことです。ダイヤが乱れると行列ができてしまい、職員にあれこれ聞くのも難しくなります。あらかじめルートを調べておき、自分で行動できることが理想です。鉄道路線の乗り換えだけを考えるのではなく、タクシーやバスを捕まえやすいか、歩いて出社・帰宅できる範囲はどれぐらいか、時間を潰したり避難しやすいのはどこかも、知っておきたいところです」
たとえば、出発する駅と目的地の駅との間で、一度乗り換えをするとしよう。その場合、中継地となる乗り換え駅は遠回りになってしまうものも含めて、3つは知っておくべきだという。
「乗り換え案内には表示されないけど、15分歩けば別の路線からも乗り換えられる……なんてことも珍しくありません。あえて“不便”なルートを把握しておくのも、災害対策には効果的だったりします」
そういった情報は駅員も把握しきれていない場合が多い。また、台風では運転再開するタイミングも鉄道会社によってまちまちだ。
「いくつかのルートを知っていれば、運転再開情報から逆算して、最適な乗り換えを選べます。バスも積極的に活用できるよう、せめて通勤で使える路線ぐらいは調べておきましょう」
台風やゲリラ豪雨といった夏ならではの災害はもちろん、普段でも人身事故などが発生したときにも、こういった情報は有益だ。人でごったがえす行楽シーズンを前に、いち早く調べておこう。
<取材・文/HBO編集部>