「Be water,my friend」香港U22世代のこれから<大袈裟太郎的香港最前線ルポ6>

九龍での再会

 不安は杞憂に過ぎなかった。  彼らが九龍をデモの場所として選択したのは、大陸からの中国人観光客にメッセージを伝えるためだった。デモの終点、西九龍駅は中国本土からの列車の終着駅である。そこが封鎖された意味はとても大きいものだった。  そして、彼らは朗らかな笑顔にあふれていた。  世代のバランスもより多様になっているように感じられた。それは若い世代を孤独にさせないという、上の世代からの強い意志のように感じられたのだ。  勢いはまったく衰えていなかった。  彼らは僕を見つけると口々に日本語で声をかけた。僕が応えるとその反響がまたうねりになって返ってきた。  エンパワーメント、人々の勇気や言葉が共鳴し合い、それがさらなるチカラを解放する。存在を高めていく。  そこには国境も人種も関係ない。僕は心底、彼らを尊敬し、誇りに思った。 ※【動画】香港 #反送中 デモ行進からの頑張ってコールを浴びる大袈裟太郎

「be water, my friend」

 7月10日、林鄭月娥が「法案は死んだ」と発表した。  それを言葉通り受け止めるかどうかは、議論を呼ぶところだが、香港市民たちはまだまだファイティングポーズをやめることはないだろう。 「be water, my friend」(友よ、水となれ)  香港が生んだ世界的スター、ブルース・リーがかつて言った言葉が今、香港市民のなかで再び流行っている。  水のように、柔軟に形を変えながら、縛られず自由に、時に穏やかに、時に激しく、彼らの行動は続いていくだろう。  彼らの歩みが続くかぎり、僕もまた彼らとともに水になろう。  この混沌の東アジアを生き抜く、僕らは兄弟姉妹なのだから。 <取材・写真・文/ラッパー 大袈裟太郎>
おおげさたろう●1982年生まれ。本名、猪股東吾。リアルタイムドキュメンタリスト/現代記録作家。ラッパー、人力車夫。2016年高江の安倍昭恵騒動を機に沖縄へ移住。やまとんちゅという加害側の視点から高江、辺野古の取材を続け、オスプレイ墜落現場や籠池家ルポで「規制線の中から発信する男」と呼ばれる。 2019年は台湾、香港、韓国、沖縄と極東の最前線を巡り「フェイクニュース」の時代にあらがう。2020年6月よりBLM取材のため渡米。 Twitter
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