自民党・尾立源幸候補に向けられた「一大産業なのにマイノリティ」なパチンコ業界の期待と不安

尾立候補Twitterアカウント凍結の衝撃

 パチンコ業界関係者であれば誰もが知っていることではあったが、尾立源幸氏のTwitterアカウントは、「おだち源幸」と「おだち源幸777」の二つが存在していた。ツイートされる内容を見る限り、どちらかがなりすましという事ではなく、「尾立源幸」のアカウントは元来の支持基盤である大日本猟友会関連のツイートや、その他尾立氏を支持する人たちとの活動ツイートがアップされ、「おだち源幸777」アカウントは、パチンコ業界関連の活動内容がツイートされていた。Twitter社が発行する、いわゆる「本人認証マーク」は前者のアカウントについている。  尾立氏はなぜTwitterアカウントを分けたのか?  パチンコ業界側が元来の支持基盤に気を使い分けたという人もいれば、逆に新参者のパチンコ業界が敬遠されたとの憶測もある。その擦り合わせを行う時間が無かっただけとの話も聞く。いわゆるパチンコアンチによる「なりすまし」通報が凍結に追い込んだというツイートも見掛けた。理由はどうであれ、この「2つのアカウント」については、パチンコ業界内でも様々な意見が聞かれた。結局、パチンコは世間の日陰者なのだと。 「おだち源幸777」アカウントが凍結された理由も現時点では明かされてはいない。まあ判明していても公言するものではないだろうが。ただ間違いなく、この凍結は、パチンコ業界に動揺を与えたし、選挙活動に積極的な層に動揺も与えた。  しかし結果として、奇しくもこの凍結が「分断の象徴」をかき消す好材料に転じた。  尾立氏のパチンコ業界における活動も、本来の公認アカウントに統合され、尾立氏側の広報が一本化されることになったのだ。  或る業界関係者の呟きが印象的だった。「これで普通の選挙活動になる」。

不安を隠せない業界関係者

 選挙は文字通り蓋を開けてみるまで分からない。業界関係者はいまだ「尾立氏苦戦」の危機感の中にいる。期待感を口にする人もいるが、やはり不安は隠せない。当たり前だ。業界関係者であれば、誰もが初めての経験だから。  筆者はこの期間、多くの業界関係者の声を聞いた。  世間的には風当たりが強いパチンコ業界。ロビイストと言えば聞こえは良いが、日本社会では「族議員」という言葉に眉を顰める人も多い。その中でも、多くのパチンコ業界関係者は真剣だった。選挙に行ったこともない人たちが連れ立って期日前投票に向かった。パチンコホールもメーカーも、パチンコで口に糊する多くの人たちが尾立氏の支持を強く訴えていた。  パチンコ業界は一大産業でありながら、一方で社会的マイノリティでもある。  パチンコ業界が「政治」に舵を切ったことが、業界の未来を拓くことなのかそれは分からない。ギャンブル等依存症問題や業界構造の問題等、克服すべき問題は山積であるし、一人の族議員を生み出したとてそこから目を背けることは出来ない。また仮に尾立氏が当選したとしても業界を取り巻く市場環境が劇的に好転するとも思えない。  しかし結果がどうであれ、この3週間の選挙期間の活動は、参加した多くの業界関係者にとって、社会的な逆風に縮こまっていた自らのプライドを取り戻す期間であり、だから私は彼らの「戦い」に共感している。 <取材・文/安達夕>
Twitter:@yuu_adachi
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