photo by The White House via flickr(Public Domain)
令和の国賓として5月25日から3泊4日で来日したアメリカのトランプ大統領夫妻は、安倍首相から宮中晩さん会、ゴルフ、相撲、炉端焼の接待を受けた。さらに28日から開かれた大阪でのG20では日米会談があったので、両首脳の意思疎通が図られているのかと思われていたが、結果を見るとトランプは安倍首相を信用していないように見受けられる。
トランプは、安倍首相が「秘密にしてくれ」と頼んだと思われる約束を暴露し、肝心のG20直後の朝鮮半島外交では、日本は完全に蚊帳の外に置かれてしまった。
トランプは「ディール外交」を自認する正直な大統領で、ゴルフや炉端焼きで左右される人物ではない。
トランプの要求は「農産物の関税引き下げ」と「FTA(自由貿易協定)」の締結である。参議院選挙に不利になる要素を先延ばしにしたい安倍首相に対して、トランプは非公式な場所で「正式には選挙後にするが、ここで決めておこう」と約束させたのだろう。
ところが共同記者会見でトランプは、「(アメリカの要求は)TPPには関係ない、選挙が終われば安倍首相からいい返事が得られるだろう、日本からはTPP以上の関税引き下げが得られる」と述べ、あっさりと安倍首相を裏切ったのだ。この記者会見を見ていた日本国民は、「安倍首相はトランプに信頼されていない」と感じたことだろう。
さらにひどいのは、6月30日のトランプと金正恩との板門店会談について、日本は完全に蚊帳の外だったことだ。
トランプがG20後に韓国を訪問することは前から報じられており、トランプが38度線の板門店に行くのではないかとの情報が流れていた。この段階で、トランプが金正恩に会うのではないかと直感した人は多くいたのではないか。私もその一人だった。最近報ぜられた情報(朝日新聞2019年7月6日朝刊)では、二人の会談の実現に向けて、両国の事務方が水面下で接触し、実現に向けて事前交渉が行われていたのだ。
2月のハノイでの2回目会談が決裂してからも金正恩はトランプとの再会を望んでおり、8月下旬にトランプに親書を送ってトランプを感激させた。トランプは直ちに返信し、金正恩は「素晴らしい」「興味深い内容について真剣に検討する」と述べたと報ぜられていた。第3回目の会談が近いことは十分予感できたはずだ。
トランプが安倍首相を信頼し、また拉致問題の解決を依頼されているのであれば、「韓国を訪問した時に、板門店で金正恩に会うかもしれない」といった感触を安倍首相に伝えたであろう。
しかしそのようなことはなく、トランプのツイッターで話は一挙に進んだ。サプライズ作戦は両国が望んでいたようだ。日本は全く蚊帳の外で、トランプから事前の情報がなかったからだ。