作り笑顔が多い人はストレスが溜まっている証拠!?(写真/ぱくたそ)
こんにちは。微表情研究家の清水建二です。これまでの本連載では、笑顔を始めとする様々な表情が他者にもたらす印象やコミュニケーション上の効果について紹介してきました。本日は、他者ではなく自分、笑顔が自分の心と身体にもたらすプラスの効果について紹介したいと思います。
私は、テコンドーという朝鮮の武道を長年鍛錬しており(とはいえ、ここ2年ほどはサボってしまっているのですが)、道場生に指導しているときに一見、不思議な光景を目にしてきました。それは、ハードな練習をすればするほど道場生は笑顔になる、という光景です。
「練習中に歯を見せないで下さい!」
と指導するのが適切でしょうか。ときにそうした指導も必要でしょう。しかし、ハードな練習に耐えるには笑顔が力になってくれるかも知れません。
事例を変えましょう。仕事でミスをしてしまい叱られている人の表情、観たことありますか。叱っている本人でなければ、叱られている人をあまり見ないかも知れませんが、これまた一見、不思議な光景を目にするでしょう。叱られているのに、「えへへ」と笑っている人が時々います。当然、その人はさらに叱られるのですが。
「叱られているのにヘラヘラするな!」
と注意すべきでしょうか。ときにそうした注意も必要でしょう。本人のためには、一旦叱っている内容については脇に置き、笑っている理由を冷静に聞いてみましょう。単に反省していないだけのこともありますが、そうとも限らないのです。
さて、この2つのケースですが、根底には共通の心理メカニズムが潜んでいます。それは、表情フィードバックという現象です。
表情フィードバックとは、楽しいから笑うという方向ではなく、笑うから楽しくなるという表情の物理的な変化が感情に影響をもたらす現象のことをいいます。
表情フィードバックに関する研究の多くは、幸福感情に関わる表情筋を実験に参加している人々にそうとは気付かれないように動かしてもらうことで、何の感情もないニュートラルな状態からポジティブな感情へと実験参加者の感情が変化することを実証してきました。
私たちの表情には自身の感情を変化させるメカニズムが秘められているのです。
さらに驚くべきことは、ちょっとしたストレスなら笑顔を意図的に作ることでそのストレスが低減することがわかっています。ストレスの低減度合いは、目尻にしわがより、口角が引き上げられる真の幸福表情が一番大きく、次に口角が引き上げられるだけの社会的笑い(いわゆる愛想笑いのことです)が続きます。