カンボジアでの密猟対策についての報告
トークイベントでは、カンボジアで深刻化しているインドシナヒョウの密猟についても、WWFジャパンC&M(コミュニケーション&マーケティング)室の小坂恵さん、辻紀美代さんが報告した。
カンボジア東部の自然保護区では、針金を動物の足や首に引っ掛ける「くくり罠」が大量に仕掛けられ、ヒョウや野生の牛バンテン、アジアゾウなどの絶滅危惧種も密猟の犠牲になっているという。
そのため、WWFカンボジアは現地行政と協力し、2016年から2017年にかけて、5515個の密猟罠を撤去した。また、生きた状態で捕まっていた167頭の野生動物を救出したという。
小坂さん、辻さんによれば、密猟が横行する背景には、現地での貧困に加え、そもそも密猟が悪いことだという現地住民の認識の欠如があるという。
WWFカンボジアでは、現地有志を募って「コミュニティ・レンジャー」として自然保護官を養成。トレーニングを行なって、密猟や違法伐採のパトロールにあたることのできる人材を増やしている。また、コミュニティ・レンジャーが現地の人々に森や野生動物を守ることの必要性を伝える役割を果たすことも期待できるとのことだ。
WWFは、現地有志を募って「コミュニティ・レンジャー」として自然保護官を養成している
今、世界では恐竜大絶滅を上回る規模・速度での大絶滅が進行していて、約100万種もの生物が絶滅の危機に瀕している。その原因は、生息地の破壊や、密猟・密漁、農薬や化学物質による汚染など、人間の活動によるものだ。
地球は人間だけのものではなく、生物多様性をいかに維持していくかは国際社会の重要課題となっている。日本も2010年に生物多様性条約第10回締約国会議のホスト国となり、同会議でまとめられた、2020年までに生物多様性の損失を食い止めるための緊急かつ効果的な行動目標は、開催地となった愛知県の名を冠して「愛知目標」と名づけられた。
日本の責任は重く、また果たせる役割も大きい。主権者・消費者として日本の市民も、本稿で紹介したような野生動物の保全に、関心を持ち協力していくことが望ましいのだろう。
<取材・文:志葉玲 会場内撮影:藍沙 写真・動画提供:WWFジャパン>