Photo by Natsuki Kimura.
「路上で酒を飲ませろ」――6月28日の夜、多くの人で賑わう渋谷にデモ隊のシュプレヒコールがこだました。デモを主催したのは、
「渋谷区の路上の自由を守る会」。20代の若者たちが中心になって今年5月に結成され、ハロウィン路上飲酒規制条例に反対してきた。
同条例は、10月31日のハロウィン当日と翌11月1日、10月24日から30日の金曜日から日曜日、さらに大晦日と元旦に、路上や公園で飲酒することを禁じている。罰則はなく、6月20日に施行された。
制定のきっかけは、昨年のハロウィンだ。酔った男性たちがセンター街で軽トラックを横倒しにするといった騒動が発生し、多数の逮捕者を出した。
あまりにもひどい騒動だったため、飲酒を規制する同条例に賛成する人も少なくない。また、ハロウィンの期間に路上で飲酒することを規制するだけなら仕方がないと考える人も多い。
「公共の場所での飲酒は憲法上の権利である幸福追求権で保障されている」
山口ナミさん(左)と和田拓磨さん(右)
しかし「守る会」は条例に反対し、5月中旬から様々な行動を起こしてきた。5月23日に路上で鍋をやり、街頭演説したのを皮切りに、渋谷駅前で連日のように飲酒し、冒頭のデモも実施した。
中心メンバーの一人である山口ナミさん(仮名)は20代のフリーター。「公共の空間で、自由に活動できなくなるのはおかしい」と感じている。
「路上でお酒を飲むなんておかしいという批判も多く寄せられます。しかし飲食店でしかお酒を飲めないとなると、お金に余裕のない人が渋谷で遊ぶことが難しくなってしまいます。渋谷区はダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包摂)を謳っていますが、路上での飲酒が制限されれば、お金のない人たちは街から排除されることになります」
渋谷駅周辺の路上や公園では、連日のように若者たちが座り込んで話したり、飲酒したりしている。路上はお金を掛けずに仲間とたむろできる場所になっているのだ。山口さんは「街で飲んでいると、知らない人がいつのまにか輪に加わって、新しい出会いにつながることもある」と路上の魅力を語る。
守る会は6月11日、渋谷区議会に署名と陳情文を提出した。陳情文では、路上での飲酒を制限することは個人の権利の侵害だと訴えている。
「そもそも公共の場所での飲酒は憲法上の権利である幸福追求権や自己決定権で保障された行為であり、音響機器の使用は同じく憲法上の権利である表現の自由で保障された行為です。加えて、条例で酒類販売自粛を求めるのは、公権力が事業者へ圧力をかけるものであり、経済活動の自由に反します」