西野朗氏のサッカー・タイ代表就任大誤報はなぜ起きた? タイ人サッカー関係者に聞いてみた

「サヌーク」

西野氏サイドが否定したことを報じるタイのオンラインメディア「サヌーク」

決まってなかったの!? タイ人サッカーファンもがっかり

 7月1日、日本代表の前監督である西野朗氏がタイ代表の監督に就任するというニュースが日本とタイを駆け巡った。特にタイのファンたちは歓喜に沸いた。アジアで最も強く、憧れでもある日本代表の、しかもついこの間のワールドカップ・ロシア大会で16強に導いた監督がタイに来る。タイ国内のプロリーグも盛り上がり、タイもワールドカップ出場を目指そうとしているタイミングだ。夢に一歩近づいたと誰もが思ったに違いない。  ところが、発表翌日に帰国した西野氏が日刊紙の記者の問いかけに対し、タイ代表就任を否定するという事態になってしまった(参照:“西野朗氏がタイ代表監督就任を否定「現段階でない」”|日刊スポーツ)。いったいなぜこんなことになってしまったのか。タイのサッカー関係者に話を聞いた。

「信じられない」と思ってた人もいたタイサッカー界

 就任を否定した速報は7月3日の日本時間早朝に公開され、わずか3~4時間後にはタイでも翻訳記事が出て、サッカーファンが大騒ぎになった。タイ・サッカー協会内部でも混乱が生じたために幹部に話を伺うことができなかったが、内部事情を知るタイ人記者はこう語っている。 「協会が発表する前からすでに西野氏の就任の噂があり、概ね合意していると聞いていました。要するに早い段階で情報が漏れていたんです。ただ、契約書にサインをする前の段階という状態でした。西野氏も訪タイしてタイのリーグの試合を視察され、報道関係者は動向を見守っていたところです」  そして1日にタイ・サッカー協会がソムヨット会長と西野氏のツーショット写真と共にマスコミへ就任を公式発表してしまう。ところが、この時点においても、実際のところは噂の段階から特に進展がなく、サインはされないまま西野氏が帰国してしまったのだ。西野氏は2日に帰国しているようだが、タイ語のニュースだったことから氏の耳には入らないまま日本に到着され、日刊紙記者の問いに西野氏本人が驚くことになったというわけ。  前出の記者が続ける。 「このケースは正直、よくあることなんですよ。だから、多くのタイ・サッカー関係者はどうなっているのかを静観していました。実際に西野氏と協会の記者会見が行われないことには信じられないと思っていた人もいるんです」  ほかの、タイ人・外国人問わずスポーツ紙の記者やサッカー・ビジネスに関わる人に聞くと、たとえばタイ・サッカー協会が記者会見やイベントを開催すると公式に発表しても、場所と日時が間違っていて、直前に変更されるということは日常茶飯事なのだそうだ。そのため、公式発表であっても裏を取る必要があり、複数の幹部や関係者に確認して初めて真偽がわかるということがよくあるという。  日本の報道もタイの西野氏就任の速報を見て追随したわけだが、協会の公式発表とあっては誰だって真実だと思うだろう。よほどの人脈がない限り、本当かどうかを確認する先も結局、情報を発したタイ・サッカー協会になってしまう。それがこの騒動の顛末であった。
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好感触に気を良くして協会側が先走り!?
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