秋田・萩へのイージス・アショア配備は現地を先制核攻撃に晒す危険性。図で検証してみた

AegisAshore

photo by U.S. Missile Defense Agency via flickr (CC BY 2.0)

血税が使われるイージス・アショア日本配備は意味があるのか?

 昨年8月からこれまでに8回、イージス・アショア日本配備についてその欺瞞と無意味さ、そして重大な弊害を解説してきました。 ●“イージス・アショアは「無敵の超兵器」か「大いなる無駄」か?”“ミサイル防衛の現実を踏まえれば、イージス・アショア導入以前にやるべきことがある”“日本のMD強化に「THAADを排してイージス・アショア」という選択は正しいのか?”“米軍迎撃シミュレーションから垣間見える、イージス・アショア日本配備計画の「不自然さ」”|HBOL“「誰がためのイージス・アショアか?」配備地から導き出される、ある推論”|HBOL”“秋田と萩へのイージス・アショア配備こそ、日本を逆に窮地に追い込む「平和ボケ」”“朝鮮半島緊張緩和が進む中、日本の防衛政策はどこに向かうべきか?”“安倍首相「家から通えるイージス・アショア」答弁の無知と詭弁と恐ろしさ”  本連載を契機として、イージス・アショア日本配備は費用対効果の面でまったく無意味なだけでなく、迎撃対象が対ハワイICBM*と対グァムIRBMであり日本国内防衛には事実上無意味であること、対合衆国ICBMの早期警戒・迎撃システムであって、対日弾道弾防衛が目的ではないこと、そのために1兆円前後の日本市民のお金が浪費されること*が、軍事専門家や軍事ジャーナリストの間でも当然のことのように論じられるようになりました。また政党機関紙でも明言されはじめたと聞いております。 <*同じく在欧州合衆国軍防衛、合衆国本土早期警戒用の欧州展開イージス・アショアは、合衆国の費用で展開され、合衆国が運用する>  更に私は、イージス・アショアは最優先の先制核攻撃対象となり、配備地の秋田市、萩市は複数の核弾道弾攻撃に見舞われ、さらに東京都心と立川市も先制核攻撃対象になるであろうこと指摘してきていますが、このことについても広く論じられるようになりつつあります。 *本記事は埋め込み地図などを使用しているため、一部配信先ではわかりにくい場合がございます。その際はHBOLにてご覧ください。

なぜ防衛省は秋田県・市と住民を欺してきたのか?

 さて6月、防衛省による秋田での住民、自治体向け説明資料が誤ったものであった事が露見*し、ついに佐竹敬久秋田県知事による事実上の立地見直し・白紙化要求に至っています**。 <*”イージス・アショア配備 “秋田市が最適”その根拠が… – 特集ダイジェスト – ニュースウオッチ9 – NHK 2019/06/06“> <**”秋田知事、防衛省の姿勢批判「貧乏県ならいいと馬鹿に」:朝日新聞 増田洋一 2019年6月29日” >  ここで疑問です。秋田県、青森県、山形県には数多くの広大な国有地、国有林があります。合衆国ハワイ防衛専用弾道弾早期警戒・迎撃・追跡基地は、秋田県以外に適地はないにしても、なぜここまで秋田市に固執するのでしょうか 私には、そのことが不思議でなりません。なにしろこのような核抑止に関わる基地は、最優先で破壊工作や先制核攻撃の対象となります。防衛省という日本国防を司る国家機関の高級官僚が、例え同盟国の為とは言え、三十万人の秋田市民を先制核攻撃の脅威に差し出す理由が全く分からないのです。  更に言えば、イージス・システムのレーダーはきわめて強力で、人間や民生への悪影響が強く懸念されます。昨年、萩市の方から知らされた、電波暴露強度の計算式は、防衛省のものには、参考とされた電波監理局の用いる数式に謎の係数が加えられており、影響を示す数値が大きく引き下げられていました。住民からの問い合わせに電波監理局は、防衛省の用いる数式は誤りであると答えており、一方で防衛省は機密を盾に係数の中身を開示しないとのことでした。一般的な数式に謎々係数を加えるのは、最もやってはいけないことであり、ペテンそのものです。  秋田市の場合、国が建設を目論むハワイ防衛専用イージス・アショアは、居住地からわずか800m弱、秋田県庁から僅か2.5km弱であり、先制核攻撃によって秋田市は最低でも人口密集地が消滅するだけでなく、日常においてもきわめて強力な電波放射に晒される恐れがあります。  日常的に強力な電波放射に晒されることの人体への影響は、科学的に未解明なところが多く、米軍では将兵にそれを避けさせてきています。またよく忘れられていますが、作戦時の艦隊において、艦艇同士の距離は数キロ離(最低でも1500m程度)離れています。また兵員は金属製の遮蔽体の中にいます。これがイージス・システムに限らず、強力な艦艇用レーダーを長年運用出来てきたことの前提条件です。  秋田市の場合、問題となる東側のレーダー二面は、日本の弾道弾防衛には殆ど無用のものですが、防衛省は頑なにレーダー四面の配備と運用を譲りません。これも当たり前のことで、秋田配備のイージス・アショアは、ハワイの弾道弾防衛専用であって、そのための早期警戒・追跡レーダーですから、東側で30万人の秋田市民が生活していようと電波照射はハワイ防衛のために必須なのです。 ▼ハワイ防衛専用イージス・アショア配備予定地である陸上自衛隊新屋演習場と秋田市の位置関係  Googleマップを見れば一目瞭然ですが、西側が完全に開けており、東側の視界も良好であるため、秋田市から青森市にかけて通過する北朝鮮による対ハワイ弾道弾早期警戒には絶好の位置にあります。敷地境界から居住地までは500m程度、秋田県庁までは2km、アショアから居住地までは700m、秋田県庁まで2.2~2.5kmしかありません*。日常的に秋田市全域がレーダーの発する強力な電波を浴びることになるわけです。また想定される先制核攻撃によって、秋田市は壊滅するという脅威が新たに生じるでしょう。 <*当初原稿では500mとありましたが、読者からの指摘を受け筆者確認後修正しています2019/7/3 17:05>
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その配備位置は「なんのため」か?
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