降りしきる雨の中、悲しく響いていた抵抗する若者たちの賛美歌<大袈裟太郎的香港最前線ルポ2>

「極東の言論の自由を守ってきた」という誇り

 LEEJと駄目元で香港外国人記者クラブの門を叩き、過去の記事や資料などを提出し、どうにかこうにか会員入りを許可された。  この会員証はプロテスターが入れない場所へ入れるメディアパスになっていて、以降、取材の幅が大きく広がることとなった。  また、この3年間、高江、辺野古で「お前はメディアじゃない!」と沖縄県警東浜警視に名指しされながら散々、排除されてきた自分にとって「日本は私を認めなかったが、世界は私を認めた」というような肯定感になり、強く鼓舞された。  日本の警察にかけられた「呪いの言葉」を香港外国人記者クラブが解いてくれたのだった。  外国人記者クラブの中は、極東の言論の自由を守ってきたという伝統と誇りにあふれていた。壁にはベトナム戦争や天安門事件の写真が並んでいた。僕らが教科書で見てきた歴史的な写真たちも多くはここから配信されたものなのだった。  世界的なメディアの部長クラスが仕立てのいいジャケットに身を包み優雅にブランチを愉しむなか、僕らだけは半ズボンだったため、ドレスコードに引っかかり、地下と2階のレストランには最後まで入ることができなかった(笑)。  まあ、上等上等と、LEEJと笑いあった。  ここのWIFIが圧倒的に盤石だったことで、悩んでいたネット回線問題が一気に解決したのだ。さっそく、SNSのタイムラインで情報収集する。

SNSで拡散していた香港警察の蛮行

SNSは大きな武器

SNSは大きな武器

 Twitterには、香港警察による暴力を可視化するツイートがいくつも流れていた。  ドローンでデモの様子を撮影した映像もあった。  昨日の香港警察による蛮行の数々が、市井の民の手によって次々に明らかになっていく。映像で可視化されて届く。  黒い武警による市民への圧倒的なリンチ。  催涙弾の水平射撃。顔面に至近距離からゴム弾を発射され、血を流す市民もいた。  80名以上が負傷し、11人が逮捕された。  病院で逮捕された市民もいた。  150発の催涙弾が使用され、メディアも容赦なく撃たれた。  自分も一歩間違えば、、、という戦慄に震えた。たまたま自分の居たブロックが大丈夫だっただけの話なのだ。
香港市民たちの叫び

香港市民たちの叫び

 そして香港当局が昨日の市民の行動を暴動と認定したこと、さらには警察側の正当防衛を主張したことを知った。香港警察は態度をより強固にすることが予想された。  シェルターのような外国人記者クラブを出て、暗澹たる気分で再び立法会への回廊に戻る。
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強硬になる警官隊の弾圧に市民たちは……
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