ヤフーが開始し、日本でも拡大が予想される「信用スコア」。浮上する懸念とは?

信用スコアイメージ

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ヤフーが信用スコアを開始。ネットで言及された問題点

 6月初旬に、ヤフーが「Yahoo!スコア」を外部提供するというニュースがネットの一部を賑わした(参照:日本経済新聞)。 「Yahoo!スコア」とは、ヤフーが独自算出した個人の信用スコアのことだ。このスコアは、本人確認の度合い、信用行動度合い、消費行動度合い、ヤフーの利用度合いを測る4カテゴリーのスコアと、それらを集約した総合スコアで構成される。このスコアをパートナー企業に提供して、ユーザーに対する特典プログラムの実施等を図るそうだ(参照:プレスルーム – ヤフー株式会社)。  この「Yahoo!スコア」のニュースが、ネットで賑わった理由は複数ある。1つ目の理由は、「Yahoo!スコア」の作成と利用が、デフォルトでオンになっていることだ(参照:藤代裕之 – 個人 – Yahoo!ニュース)。  この「Yahoo!スコア」の作成と利用については、特にメールで連絡はなかった。プレスリリースの存在を知らずにヤフーのアカウントを利用していれば、気付かないうちに「Yahoo!スコア」の作成と利用をオンにした状態になる。  この設定をオフにするには、「Yahoo!スコアの作成・利用」ページに行き、手動でオフにしなければならない。私もオンになっていたので、とりあえずオフにしておいた。  2つ目の理由は、スコアが本人には分からないことだ。プレスリリースには「ユーザーが自分自身のスコアを確認できる機能の提供を目指す」と書いてある。しかし「提供する」とは書いていない。自分で数字が分からない情報を、パートナー企業に提供すると言われても、基本的には同意できないだろう。  3つ目の理由は「知恵袋での活躍度」が信用行動として掲載されていたことだ。「えっ、知恵袋での活躍度合い?」ということで、色々な妄想を膨らませられた。 「知恵袋での活躍度」が採用された根底には「外部に公表されている情報のみを使うことでプライバシーに配慮した」と考えているヤフーの姿勢がある(参照:高木浩光@自宅の日記)。  ヤフーでは、公開されている個人情報なら、本人の意図にそぐわない使い方をしてもよいと考えているようだ。しかし、プライバシーへの配慮としてはまずいだろう。公開されている情報を組み合わせることで他の意味を持つことがある。どういった使い方をするかを示して、同意を取る必要があるだろう。  スコアの数字だけが提供されるようだが、その内容が個人の意図通りのものかは、スコアが本人に示されないので不明だ。色々と問題が多いと感じさせられる。

2019年、IT市場のトレンドは「信用スコア」に!?

 去年の日本のIT業界は「QRコード決済」の年だった。今年の日本のIT業界は「信用スコア」の年になるかもしれない。多くの企業が、この分野に参入を表明している。  まずは、みずほ銀行とソフトバンクが2016年11月に設立した合弁子会社「J.Score」だ。「日本初、AIスコア・レンディング、始まる」というキャッチフレーズの、個人向け融資サービスだ。J.Scor では、顧客データをスコア化して融資に活用する。従来では融資できなかった低与信層に融資可能となる見込みだそうだ(参照:Wikipedia)。  ドコモも2018年10月に、ドコモのビッグデータを活用した「ドコモスコアリング」と、新たな融資サービスを提供する仕組み「ドコモ レンディングプラットフォーム」を発表している(参照:NTTドコモ)。  LINEも、2018年11月に個人向けのスコアリングサービス「LINEスコア」と、個人向け無担保ローンサービス「LINEポケットマネー」を発表している(参照:LINE Corporation)。  ヤフーは、2018年10月から実証実験を始めて、今年の7月1日からサービスの提供を開始する。ヤフーは、よくも悪くも業界を牽引する。2019年は、こうした和製信用スコアが入り乱れる年になるのではと予想される。
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「信用スコア」の先駆け、中国では大躍進
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