では、実際に結婚し子どもを持つ男女にとっては、「共働き」をしやすい状況なのだろうか。6月4日に厚生労働省が発表した
「平成30年度雇用均等基本調査(速報版)」によると、男性の育児休業取得者の割合は6.16%で、前年度より1.02ポイント上昇した。
一方で、より詳細な「平成27年度雇用均等基本調査」によると、平成27年度(2015年)の男性の育児休業取得日数について、56.9%が「5日未満」と回答している。男性が取得する、たった5日未満の育児休業は、女性の育児における負担を軽減し女性が働きやすくするために、いったいどのような効果があるのだろうか。ただの有給休暇や夏季休暇と、何が違うのか。女性も働き、家庭が経済的な余裕を持つためには、夫婦が協力し合って子育てをすることが必要だったはずだ。制度ばかりが先走り、実態が伴っていないことが明らかである。
男性の育児休業の制度が形骸化していることについては、先日Twitterをきっかけとして明るみに出たカネカの件も物語っている。政府は、少子化社会対策として企業に対して育休取得を推奨する取り組みやインセンティブを提示しているが、それに対して企業は数々の「制度」を採用し、政府の要請に応える形を整えている。しかし、結果としては、「制度」があっても、本来の目的を達成するために活用されているとは決して言えない状況だ。
企業側にとっては、育休等の制度が整っていることや、育休取得率を企業PRの一環として利用することができる。ただ、それこそが、「女性の社会進出を後押しする」、「共働きを支援する」といった本来の目的を見失うことに繋がっているのではないだろうか。政府が提供するインセンティブを追いかけて、形式ばかりを整え、PRする。男性の育休取得率をPRするために、1日だけ育休を取得させている企業もあると聞く。
企業に対するインセンティブが、数字だけを追いかける結果となるのは、本末転倒である。結局は、雇用者側・企業側の本質的な意識改革が伴っていないと、状況は変わらないと考える。制度が整っているだけでは、優秀な人材は確保できない。女性従業員の退職を防ぎ、共働きを維持させるには、どうすればよいのか。政府の指針に従うだけでなく、雇用者側が自分事として取り組み、従業員の声を聞き、実効的な対策を打つことが求められている。
<文/汐凪ひかり>
早稲田大学卒業後、金融機関にて勤務。多様な働き方、現代社会の生きづらさ等のトピックを得意分野とし、執筆活動を行っている。