激安「借地権付き物件」で一石二鳥の不動産投資。その手法と注意点

将来的には売却益も期待することができる

 そして、不動産投資において物件購入とともに大切なのが、将来的な売却を見据えた出口戦略だ。借地権付き物件の場合、どういったシナリオが想定されるのか。河田氏は次のように解説する。 「売却を考える場合は、地主から底地権を買い取り、所有権として物件を売却できれば理想的。借地権と底地権を一緒に売ることで、バラバラに売るよりも高い利益を得ることができます」  たとえば所有権なら1億円相当の土地の借地権を6000万円で買い、その数年後、底地権を2000万円で買うことができれば、結果的に1億円の土地が8000万円で入手できるため、大きな売却益を望めるというわけだ。 「もちろん、地価の状況によっては借地権を単独で売って利益を得られる可能性もありますが、底地権と一緒にすることで、より大きなキャピタルゲインを狙うことができます。底地権は現金化することで相続の際の税金を圧縮できる可能性があるため、そのことを丁寧に説明すれば、売却に応じてもらえるかもしれません。出口戦略を入念に考えることも、借地権付き物件に投資をする醍醐味です」  通常の不動産投資とは異なるメリットとデメリットを併せ持つ借地権付き物件への投資。今後、その市場がより活発化する可能性は高いとの見方もある。 「競売物件や任意売却物件など、かつては不動産のプロ以外は手を出そうとしなかった“ワケあり物件”に、ネットなどで情報を集めやすくなった昨今では個人投資家の方も多く参入してきています。借地権付き物件も同様で、驚くほど安い仕入れ値で物件を入手し、家賃収入を得ることができる可能性があるため、今後はそのメリットにひかれ、購入を新たに検討する投資家は一層増えていくことになるかもしれません」(野田氏)  まだ多くの人が目をつけていない“金脈”だからこそ、今から着実に準備を進めておきたい。

<借地権付き物件のメリット>

●購入価格が安くなる  所有権を購入するのに比べて大幅に安く買えるため、結果的に利回りも向上。地域によっては所有権の半額程度で手にできる ●税金が安く済む  固定資産税や都市計画税は地主に課税されるため、借地人は払う必要がない。また、地主に払う地代は損金として処理できる ●高値売却できる可能性も  底地権も追って購入することができれば、借地権と底地権それぞれの購入価格を合算した金額以上で売却できる可能性が高まる

<借地権付き物件のデメリット>

●融資がつきにくい  借地権のみの保有では担保評価が低いため、金融機関の融資がつきにくい。融資の審査を受ける際にも地主の同意が必要となる ●売却には許可と承諾料が必要  借地権の売却を行うためには地主の許可が必要となるうえに、売却価格の1割程度を「承諾料」として地主に払う慣習がある ●現金化に時間がかかる  流動性が低く、手続きが煩雑となることもあるため、急な現金化が困難。借地権を売り急ぐと買い叩かれる危険性もある 【河田康則氏】 不動産投資家。元外資系保険会社支社長で、保険や銀行業務に精通した相続コンサルとしても活躍。『「不動産投資」知識ゼロから儲ける1年生の教科書』など 【野田晴夫氏】 TGホーム代表取締役。不動産販売会社を経て、’14年にTGホームを設立。不動産の買い取り、売買仲介、管理を担い、借地権付き物件や再建築不可物件も数多く取り扱う 取材・文/小林義崇
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