知っている間柄であれば、自己紹介は要らないと思う人は、自己紹介は、会社名や、所属名や、氏名を言うことだけだと思い込んでいる。自己紹介は、会社名や、所属名や、氏名を言うことだけではない。今の気持ちや状況を伝えることも、立派な自己紹介だ。
「本日司会を務めます山田太郎です。
不慣れですが、よろしくお願いします」
「本日司会を務めます山田太郎です。
本日は進行役を買って出ました」
「本日司会を務めます山田太郎です。
出張帰りですが、帰路、準備してきました」
これが会社名や所属や氏名を言うだけであったり、知った間柄であるからと何も言わずに本論に入ってしまうと、おもしろみのない人、門切な人と思われてしまい、人を巻き込むことができなくなる。
たった一言、今の気持ちや状況を伝えることは、ほんの数秒の、とても単純なスキルだ。しかし、普段、実施していない人がやろうとすると、意外にむずかしく、最初はできないことが多い。
そういう場合は、あれこれ考えず、会社名、所属名、氏名の後に何でもいいから、頭に浮かんだことを一言添えるということを機械的にやってみると、数回のうちに、できるようになる。
とても単純なスキルだが、何度も繰り出す機会がある自己紹介の場面で、その簡単なスキルを発揮し続けている場合と、発揮していない場合とでは、相手を巻き込むレベルに、とても大きな差が生じてしまうのだ。
質問:知っている間柄であれば、自己紹介は不要ではないか
面談時にあらためてBIGPRを伝える必要性はわかりましたが、お互いによく知っている間柄であれば、さすがに自己紹介は不要だと思うのですが、自己紹介もあらためて行ったほうがよいのでしょうか?
回答:自分の状況や気持ちを伝える
自己紹介というと「所属会社と氏名を言うこと」というように思いがちですが、面談に向かう今の自分の状況や気持ちを伝えることこそが、自己紹介で伝えたい内容です。
所属会社と氏名を間違いなくわかっている相手に対しては、「昨日、出張から帰ってきました」「今日一番でお伺いできて、とても嬉しく思っています」というように、近況をお伝えすることをお勧めします。
名刺に書いてある内容を言うことよりも、今の状況や気持ちを伝えることのほうが相手を巻き込む度合が高いので、お互いよく知っている間柄で、自分の所属や名前をわかっている相手に対しても、今の自分の状況や気持ちを伝えましょう。そうすることで、相手との距離を、面談の冒頭で縮めることができます。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第141回】
【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『
チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『
クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある