弁護士・大貫憲介の「モラ夫バスターな日々」<16>
夫(30代)は、横になっている妻の隣に座り込んで、
「妻だから応じるのが義務だろう」
「浮気してもいいんだな」
と妻を責めた。
妻が拒否すると、この夫は、結婚した以上、性交渉に応じるのが妻の義務、セックスレスは、離婚理由になると言い募るのが常だった。そして、夜中から明け方まで説教が続く。眠い、明日仕事だからと言っても、いいから話を聞け、そこに座れと許さない。
この日、妻は、ぎっくり腰で痛みがひどく、横になっていた。夫が求めてきたので、「ごめんね、早く治すからね」と謝ったが、夫が布団の横で顔を覗き込んで、妻を責め始めたのである。説教が始まる、そう思い、妻は、痛みをこらえて応じることにした(注:家裁実務上、セックスレスは離婚理由とされてはいない)。
性交渉拒否が続くと、夫は怒り、説教を始めるので、2回に1回は応じるようにしている妻もいる。夫は、自分の満足だけを求めるので、この妻にとって、夫との性交渉は苦痛でしかない。
ところで、昭和時代、性交渉は一般的に妻の義務とされ、「夜のお務め」とも呼ばれた。しかし、最近、セックスレスが急増してきた。学者たちの研究報告によると、セックスレスの中高年夫婦は、この12年間で倍増し、約7割に上るという。(
参考:ヨミドクター)
諸外国と比べても、日本のセックスレスは断トツに多く、性交渉満足度は低い。事態は、深刻である。
男性向け避妊具の大手メーカーDurex社は、毎年セックスに関わる国際比較調査をウェッブサイトで行い、ホームページで公開している(
参考リンク:社会実情データ図録)。
断トツ、ぶっちぎり最下位の日本に続く下位グループには、中国、香港、台湾など中国勢が入っている(韓国は調査対象外)。儒教とモラ文化の親和性(
モラ夫バスターな日々13参照)を考えると、中国勢が日本とともに下位グループにあることは当然であろう。