まったく役に立てなかった安倍首相だが、果たしてトランプは何故安倍首相に米国がイランと関係修復したいという意向を伝える役割を託したのか?
それは、現在のトランプ大統領には安倍首相以外にそれを頼める人物はいないということだ。
最近のトランプはボルトン大統領補佐官とポンペオ国務長官の強硬外交への疑問を持つようになっている。またトランプは欧州連合(EU)を貿易面と防衛面で敵であるかのように見なす外交を展開して来た。よって、EUで頼める人物はいない。勿論、ロシアと中国にイランとの関係修復を依頼することなど絶対にできない。そこから唯一この使命を頼めるのは、
国際外交の舞台でこれまで活躍することのなかった日本の安倍首相に白羽の矢を立てたのである。
しかし、そのトランプであるが、安倍首相来訪後に、「安倍首相がハメネイ師に会いにイランに行ったことは感謝しているが、個人的には私は時期尚早だったんじゃないかと思う。彼らも、アメリカも準備できていないし」とツイートしている。
ではなぜイランとの関係修復の必要をトランプは感じるようになったのか。2015年にイランとの核合意を一方的に破棄したトランプである。それが今、なぜ対イランとの外交関係修復の必要性を感じるようになったのか。理由は、米国がイランへの制裁の一貫としてイランからの原油の輸出をゼロにさせようとしていることに対して、その対抗手段としてイランはホルムズ海峡を封鎖すると警告しているからである。それを敢えて実行に移すとは思えない。しかし、可能性は常に存在している。
仮にホルムズ海峡が封鎖されればイラク、クウェート、バーレーン、カタールそしてイランからの原油とガスの輸送が出来なくなる。それは世界の取引の20%以上を占めることになる。その場合、専門家の間では原油価格はバレル200ドルまで高騰する可能性があると指摘しているという。そうなると、世界経済は後退し、世界規模で金融危機を招くことになる。
このような事態になることを避けたいとトランプは望んで安倍首相にイランとの関関係修復に協力を要請したということである。
しかし、結果として安倍首相はなんの役にも立てなかった。それも当然である。安倍首相はこれを日本の外交力を知ら示す絶好の機会と見ているのだろうが、背後にトランプが控えているのがミエミエでは目的達成は無理であろう。
しかも、日本(安倍首相)には外交能力はない。その為のノウハウの蓄積もないのだから。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身