義足になった記者が知った、踏み間違え事故防止のヒント

「ワンペダル」使用の様子を見てみると

 さて、右足が義足になったことで推奨して頂けたそのワンペダルだが、メルマガ読者の木村さん(仮名)ご自身も70代の高齢者でワンペダルを導入しているとのお話を伺ったので、実際にご本人のところへ出向き、助手席に座らせて頂いて運転している様子を拝見させてもらってきた。  自分の目で確かめるまで1つのペダル操作だけで可能なワンペダルだと、むしろ急ブレーキとか急アクセル発進とかしないのかと最初は心配だったが、木村さんの柔らかい運転でその不安は完全に払拭。足を右に傾けるとアクセルで踏めばブレーキという分かりやすいシステムなので、確かに身体障害者だけではなく、反応が鈍くなっている高齢ドライバーには最高の運転方法と実感した。 「このワンペダルの凄いのは、アクセルをかけたままでペダルを踏み込んでもクラッチが外れアクセル操作が効かなくなってクルマそのものの暴走も防げるんです」と木村さんは説明してくれる。「私がワンペダルを導入したのは、歳を重ねると共にブレーキのタイミングが遅れてきている感覚が分かったんですね。そこでアクセルペダルとブレーキペダルが独立している運転席よりもこのワンペダルだと足の踏みかえが必要ないし、踏み損ないも発生しないのでブレーキを踏む反応が今までより格段に上がったんです」と。

踏み変え不要で反応が抜群に早い

 木村さんが導入したワンペダルは右足専用のシングルタイプ(両足兼用のダブルタイプもある)だったので筆者の義足の右足で踏み込むには不安が募ったことで運転を差し控えさせて頂いたが、これは素晴らしい技術と体感したのが、信号のない横断歩道で主婦がママチャリで一気に駆け抜けてきた際(飛び出しに近いかな)即座にブレーキ反応を味わえた瞬間だろう。文字だけでは伝わりにくいが、通常のアクセルとブレーキのペダルがセパレートになっているクルマよりも足元を踏みかえる必要がなかったからか、止まる反応の早さにワンペダルには今後加速する高齢化社会かつ、高齢ドライバーの増加で事故を未然に防げる未来が見えた。決してオーバーな表現ではなく、20万円程度の費用で改造可能なので、交通事故を起こしたくない高齢ドライバーには激しくオススメしたい。
吉田車

吊り下げ式で改造された筆者の車 (筆者撮影)

 ちなみに、ワンペダルの導入は見送ったものの、筆者の愛車も障害に対応した改造を行っている。奇しくも、筆者の愛車はプリウスだが、吊り下げ式のアクセルペダルなので、退院後に福祉車両として左にアクセルペダルを装着し、左足で踏み込むサイドブレーキは運転中に間違えて踏んでしまったことが何度かあったため、手動で使えるように改造してもらった。身体障害者4級では最大10万円まで国から出る補助金がなぜか福祉車両への改造では受けられず(右足の義足でアクセルペダルを踏んで運転したこともあるが反応が遅く危険なのに絶対おかしい)結局自費で運転席の足元を改造したのである。 【吉田武 a.k.a. ジャンクハンター吉田】 交通ジャーナリスト、映画コラムニスト。交通関係では三才ブックス『ラジオライフ』を主軸に執筆しつつ、『WEB CARTOP』『週刊プレイボーイ』『FRIDAY』『Abema Prime』などへ登場の他、まぐまぐのメルマガにて『疑問だらけの道路交通法』を毎週金曜に発行中。映画関係ではBS10スターチャンネルで放送中の映画情報番組『映画をもっと』にレギュラー出演など。
交通ジャーナリスト、映画コラムニスト。交通関係では三才ブックス『ラジオライフ』を主軸に執筆しつつ、『WEB CARTOP』『週刊プレイボーイ』『FRIDAY』『Abema Prime』などへ登場の他、まぐまぐのメルマガにて『疑問だらけの道路交通法』を毎週金曜に発行中。映画関係ではBS10スターチャンネルで放送中の映画情報番組『映画をもっと』にレギュラー出演など。
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