このように申し上げると、「机の上に置いてあるということは、作成できているということなので、わざわざ言う必要はないのではないか」「課長が不在だったことは、当の課長がわかっているはずなので、わざわざ言うとくどいのではないか」「課長は忙しいので、手短に結論だけ言えと言われているので、そうした」という声が返ってくる。
しかし、課長側に聞いてみると、「自分の答えにストレートに返答してくれないと、まずは苛立つ。その後で、自分が不在だったから机の上に置いたのだなというように思いを巡らすことができるが、苛立ちの気持ちは残る」という。
このように、違和感やストレスを与えて、心が泡たち、苛立ちの気持ちを上司に与えてしまうことは、部下にとって損なことだ。
だとすれば、話を飛躍させず、言葉足らずにならないように会話をすればよいことになる。なにも長い時間を要するわけではない。パターンBでも、パターンAに対して、ほんの数秒、時間を要するだけだ。
相手に違和感を与えないことは、最初が感じだ。最初にストレスを与えてしまうと、その後の会話全てに影響してしまう。話の最初に実施すると相手を巻き込みやすくなる
BIGPRを、省略しないほうがよい理由は、そこにある。
質問:相手が知っている内容でも冒頭で伝えなければならないか?
BIGPRの内容の全てや一部を、相手が承知している場合でも、会話の冒頭で伝える必要があるでしょうか? 相手が知っていることを話して、逆に、「そんなことは知っている」と思われて、相手を苛立たせるのではないでしょうか?
回答:面談時にあらためてBIGPRを伝える
数日前に、相手にメールでアポイントメントをとって、その際にBIGPRを伝えている場合でも、実際の面談の場であらためて、「メールでアポイントメントをとらせていただきました」という背景や、自己紹介、目的、所要時間、相手に期待する役割を伝えることをお勧めします。
面談のその場で、相手にBIGPRを思い出してもらう効果があるからです。「たしかに、そういう目的だったな」「聞いていたけれども、1時間のミーティングだったな」というように、再確認していただくことができるのです。
話し手から見ると、相手はわかっているはずだと思えることでも、相手はあまり意識していないということがありがちなので、BIGPRをその場の冒頭で話すことが大事なのです。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第140回】
【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『
チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『
クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある