黒い未亡人事件、仕掛け人の暴力組織M13のメンバーたちの様子を報じる「Elsalvador.com」
5月に入ってエルサルバドルで加害者が「黒い未亡人」と呼ばれる事件の公判が初めて開かれた。従来、「黒い未亡人」といえば、チェチェン紛争で家族を失った女性たちが組織したイスラム主義テロ組織であったが、エルサルバドルのものはそれとは違う。それは、現在のエルサルバドルで勢力を伸ばしつつある凶暴な暴力組織が背後に控える恐るべき犯罪形態なのだ。
どういう犯罪なのか? まず暴力組織に恐喝されているある女性が、それまで面識のない男性と結婚する。その後、結婚相手の男性に生命保険をかけさせ、女性の背後にいる暴力組織のメンバーが彼女の夫を殺害して、彼女は保険金を受け取る。そしてその女性から暴力組織が保険金を巻き上げる……という犯罪だ。
この事件を調査している主任検事ビオレタ・オリバレスによると、黒い未亡人が保険金でこれまで得た収入総額は10万ドル(1300万円)にまで上るそうだ。500ドル(55000円)もあればひと月ゆとりある生活ができる国だ。10万ドルというのはエルサルバドルでは大金だ。(参照:「
Elsalvador.com」、「
BBC」)
具体的な手口について、オリバレス検事はBBCの取材にこう答えている。
「暴力組織のメンバーが高級車をレンタルで借りて、そのグループに協力している女性がその車に乗ってバルなどに行って男性をハント。センチメンタルな関係にまで発展したあと、結婚して米国に行きたがっている姪っ子がいると告白して男性に姪っ子との結婚を誘うのだ」
更に、オリバレス検事はこれに絡んで犯行に至るまでの過程を次のように説明している。
まず、”姪っ子”役になる若い女性は過疎地域に住んでいる女性を対象に選び、首都のサン・サルバドルで月給250ドル(27500円)で家事手伝いとその家庭の子供の世話の仕事があると言って誘うのである。そこで3週間働いたあと、近くの別の家に連れて行かれて、それまで全く面識のないそこの住人と結婚を義務づけられるのである。それに従わない場合は彼女の郷里の家族を殺害すると脅迫し、また肉体的そして性的暴行を受けるという。そこで彼女は仕方なく結婚するわけだ。
一旦結婚すると、暴力組織のグループの指図に従って彼女は夫となった彼に銀行の生命保険に加入することを説得するのである。銀行の保険はステータスがあるという。それから3-4週間後に暴力組織のメンバーによって彼は殺害されるのである。
その後の葬儀では夫の死亡を嘆き悲しんでいる未亡人という振る舞いを演じる義務を暴力組織から指示される。その目的はひとつ。掛けた生命保険の死亡保険金を受け取るのに疑いをもたれないためである。死亡保険金として受け取る金額は1万5000から3万ドル(165万円から330万円)が相場だという。勿論、それも暴力組織が抱えている弁護士から事前に助言されているそうだ。(参照:「
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BBC」)