馬場幹事長「維新は4島一括返還の旗を降ろしてはいない」
馬場伸幸・維新幹事長
――橋下さんが「4島返還には戦争しかない」に続けて「現実的な2島返還」を主張していますが、この二段階論は維新内部でも論議や意見交換で出ていたのではないでしょうか。橋下さんの影響をかなり受けている維新の国会議員の間で、こういう考え方は共有されていたのではないでしょうか。
馬場幹事長:横田さんが思っているよりも、我が党の国会議員は自立しています。橋下徹さんに深く影響されているということはありません。そのうえで、我が党としてはやはり政府が4島一括返還の旗を降ろしていない以上、元島民の皆様をはじめ返還運動に関わっている皆様方ももちろん4島一括返還の方針で運動をしているわけです。我が党としてもそれをサポートしていく意味では、4島一括返還の旗を降ろしているというわけではありません。
――ただ安倍政権には、2島先行返還に世論を誘導しようという節があります。それを先取りする形で、維新内部では「2島先行返還で行くべきだ」という声は出ていなかったのでしょうか。そもそも「4島返還は戦争でもしない限り非常に困難な膠着状態にある」という認識はなかったのでしょうか。
馬場幹事長:それを正式に何らかの場で議論をしたことはありません。ですから安倍総理が2島先行返還論をおっしゃっても、それが正式な政府見解にならない限り、日本維新の会は自民党の先兵ではないので、我々は我々の考え方でこの北方領土問題については対応していきます。
馬場幹事長の回答を聞けば聞くほど、橋下氏と丸山議員の共通点が目に付いてくる。馬場幹事長は「日本維新の会は自民党の先兵ではない」と強調するが、実際には、安倍政権を支える一方で地元・大阪への利益誘導に成功してきたことは橋下氏自身が『政権奪取論』の中で紹介している。
そして橋下氏は北方領土問題でも、非現実的な「4島戦争返還論」と示したうえで、安倍政権の落しどころと見られる「2島(先行)返還論」に導く“先兵役”をしていた。同じように“維新橋下学校”で教育されたであろう丸山議員もまた、安倍政権が世論誘導しようとした「2島返還論」へと方針変更にプラスになると考えて非現実的な「4島戦争返還論」を大塚団長に投げかけたのではないか。橋下氏と丸山議員の間には、ある種の師弟関係が成り立っているようにも見えるのだ。
似通った五十歩百歩の主張をしたのに、橋下氏には社会的制裁が一切なく、丸山議員だけが世間の袋叩きに遭うのはあまりにアンバランスだ。「橋下氏と丸山議員は“似た論者”同士」という視点で、この問題を再検証する必要があるのではないだろうか。
<取材・文・撮影/横田一>
ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた
『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他
『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数