写真/時事通信社
歴史上最大の「食文化」の大転換。もう牛肉は食べられない!?
牛肉食の増加と、それに伴う森林破壊や穀物価格の高騰、水資源の枯渇が深刻化している。今後地球は人口100億人時代を迎えるといわれ、もうこのまま肉食を続けることはできないと予測されている。そこで新たな技術の開発が進んでいる。それが「培養肉」という技術だ。
世界人口が70億人を超え、中国など新興国で食肉の需要が増化するなか、懸念されているのがタンパク質危機だ。近い将来、肉の需要に生産が追いつかなくなる恐れがある。また、家畜を出荷するまでには大量のエサが必要で、現在でも世界の穀物生産の約半数が家畜用飼料となっている。諸外国では牧草地や農地のため、すでに大規模な森林破壊が行われている。新たに農地や牧場を拡大することは、生物多様性の保全や温暖化防止という視点からも難しい。
そこで「新たな選択肢」として脚光を浴びているのが、家畜の細胞を培養し食肉にするという「培養肉」だ。
今年3月、東京大学生産技術研究所の竹内昌治教授らは日清食品ホールディングスなどと共同で、牛の筋細胞を培養し、サイコロステーキ状の筋組織を作ることに世界で初めて成功した。
東大生産技術研究所と日清の共同研究によって作られたサイコロステーキ状の培養肉。これは世界初の快挙だ
写真/東京大学生産技術研究
「培養肉は世界各国で研究されていますが、そのほとんどは、ハンバーガー用などのミンチ肉状のもの。ステーキ肉のような構造を持たせるには、筋繊維が束ねられた構造を再現する必要がありました。私たちは、細長いゼリー状のコラーゲンの中で培養した牛の筋細胞同士を融合させ、それを重ねていくことで、筋組織特有の構造である『サルコメア構造』を作ることができました」(竹内教授)
今回作られたサイコロステーキ状の培養肉は、1㎝四方のもの。竹内教授はヒレステーキのような、より大きな培養肉を作ることを目指しているという。
「培養肉を大きく育てるには、筋細胞に栄養を届ける仕組み、つまり血管のようなものを作る必要がありますし、味という点では脂肪細胞も筋細胞も一緒に培養する必要があります。これらの課題には、再生医療の技術を応用していこうと考えています」