安倍政権を支える麻生太郎財務相は、5月15日の衆院財務金融委員会で、日本経済の現状は消費税引き上げに「十分耐えられると思っている」と発言。6月のG20大阪サミットで消費税増税を表明すると言っているが…… 写真/時事通信社
今年10月、8%から10%への消費税増税が決定済みだが、ここへきて再々延期の可能性が現実味を帯びてきている――。
安倍政権は’14年に、同年4月に5%から8%に引き上げた際、増税前の駆け込み需要が発生し、その後に反動減に見舞われたことを理由に、同年11月、10%への引き上げを先送りした。ところが、’16年6月には2度目の延期を決定。新興国経済の減速を憂慮し、「新しい判断」として将来のリスクを回避したのが理由だった……。
経済ジャーナリストの荻原博子氏は、増税を再々延期せざるを得ない理由がいくつもあると指摘する。
「世界経済は見通しが暗く、IMF(国際通貨基金)や世界銀行が今年後半に悪化すると予測している。さらに、米中貿易戦争の悪影響も出ている。一方、国内経済は輸出が激減し、GDPの2本柱の消費と設備投資が落ち込んでいる。賃金を見ても、働き方改革で残業が減ったのに給料は上がらず、手取りが減っている。年金は4年ぶりに支給額が0.1%上がったものの、物価は1%上がり、実質マイナス。個人消費が上向くわけがないのです」
確かに、5月20日発表の1-3月期GDP速報値は、前期比+0.5%と市場予想を上回ったものの、設備投資は0.3%減と落ち込んだ。GDPが前期比プラスだったのは、米中貿易戦争で輸出が激減したが、それ以上に輸入が減少したからにすぎない。内閣府も、景気の基調判断を実に6年2か月ぶりに「悪化」へ引き下げている……。
一方、官邸周辺が物議を醸す事態も。4月、首相側近の萩生田光一幹事長代行が「増税延期もあり得る」と発言。5月10日、ふたたび「(消費税増税が)決まっているから、なりふり構わずゴールテープを切るという姿勢はよくない」と言って、波紋を広げた。