債務者は借金の存在を家族に隠していただけでなく、自宅が競売にかかる寸前であることも今まで隠し通し、一人で何とかしようとしていたらしい。
この日も当初の予定であれば家族全員が外出となり、債務者だけが一人家に残って執行対応を処理してしまう予定だった。
今回、運良く?債務者の妻(おばあちゃん)が通知書面を発見したため、このような修羅場となってしまったわけだが、やはりこれは幸運が招いた修羅場と考えていいだろう。
このタイミングであろうとも事態が飲み込めれば、4~6ヶ月ほどの猶予内に債権者との折り合いをつけることで訴えの取り下げを依頼することもできる。
運悪くこのタイミングで事態が発覚していなかった場合は、約6ヶ月後に突然次の不動産所有者だという人物から「今すぐ出て行け」と言われていた可能性すらある。
事情説明に耳を傾け、ようやく今起こっている事が飲み込めたおばあちゃんは、我々の目をはばかることなく泣き崩れる。ジッと下を向いて動かない債務者を除いた家族全員が、それをなだめていた――。
借金やローンの存在。そして借り入れへの返済が不能になるという事態。
これらを“恥”と捉え、一人で抱え込むことで最悪の状況を招くという債務者の存在は少なくない。
人様の家を取り上げに行く度に思うこともある。
一軒一軒の家に暮らす家族全員が事態解決に向け、恥やわだかまりを捨て協力しあっていたとしたら。おそらく7割以上の事例で競売を免れることが出来ていただろう。
現状では残念なことに我々が訪れる時点で大半の家庭が既に崩壊している――。
資本・経済・物質主義の一元的な価値観に踊らされ、ないがしろにされてきた家庭。我々はそんなぞんざいな扱いを受けてきた家庭の抜け殻を処理しているに過ぎない。
ようやくこれまで横行してきた資本・経済・物質主義に縛られない価値観が台頭しつつある。
これに対しホコリまみれの経済論や経済指標を引っ張り出し「貧しくなった」「収入が減っている」「デフレマインド」とチグハグな論調を展開するものも少なくない。
身の丈以上の収入や物品を求めず、無理せず賢い消費を心がけ、その分ゆとりある時間で趣味や家庭を大切に楽しむ。
新しい価値観なのだと彼らに胸を張らせるべきではないだろうか。
多くの債務者が資本・経済・物質主義に囚われたまま、家庭や生活をバタバタと崩壊させている。
このような事例を多く眺めていると、彼らもまた一時の価値観や主義主張に踊らされた被害者と言える気がしてならない。
<文/ニポポ(from トンガリキッズ)>
2005年、トンガリキッズのメンバーとしてスーパーマリオブラザーズ楽曲をフィーチャーした「B-dash!」のスマッシュヒットで40万枚以上のセールスとプラチナディスクを受賞。また、北朝鮮やカルト教団施設などの潜入ルポ、昭和グッズ、珍品コレクションを披露するイベント、週刊誌やWeb媒体での執筆活動、動画配信でも精力的に活動中。
Twitter:
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オフィシャルブログ:
団塊ジュニアランド!
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全国の競売情報を収集するグループ。その事例から見えてくるものをお伝えして行きます。