WHO、国際疾病分類に「ゲーミング障害」を登録。eスポーツ はどうなる?

いち早い反応を示したゲーム大国・韓国

 今回のWHOの「ゲーミング障害」の疾病認定の報を受け、韓国の中央日報がWHOに対し「eスポーツの選手たちはゲーム依存に分類されるのか?」という質問をした。  日本におけるゲーム文化も古くはインベーダーゲームから現在のスマホ・ネットゲームに至るまで長らく醸成はされてきたが、韓国におけるゲーム熱は尋常ではない。ゲーム依存が深刻な社会的な問題にまで発展し、政府が強制的なシャットダウン制の議論を始めるなど、ゲーミング障害問題が常態化しているといっても過言ではない。  一方でeスポーツの分野では韓国は「世界最強」とも言われており、数々の世界大会で優勝を重ねている。その背景には、国を挙げての育成政策が奏功していることが大きく、子どもたちの将来の夢アンケートでも「プロゲーマー」が上位にランクインするほどだ。  しかし一日中(それが職業なので当たり前かも知れないが)ゲームに没頭する選手らにはゲーミング障害にはならないのか。  章頭の中央日報記者の質問に対するWHOの返答はこうだ。 「事実上(eスポーツの選手は)ゲーミング障害には該当しない。ゲーミング障害は、ゲームへの過剰な依存により、個人、家族、社会的・教育的、もしくは職業的機能に顕著な障害や深刻な損傷を招く状態を言う」  eスポーツがあくまで職業であり、彼らが「過剰労働」により健康を害さない限り、それ自体をゲーミング障害とは呼ばないという事だ。

メディアが安易に「依存症」や「中毒」という言葉を用いることは危険

 以下は、蛇足である。  本稿を執筆するにあたって、「ゲーミング障害」という言葉を用いた。多くの報道においては「ゲーム依存症」という言葉が使われている。WHOでは、このことを「Gaming disorder」と表現しており、「disorder」とは「障害」と訳される場合が多い。  依存問題には医療的な支援を要する場合もあれば、当事者の生活環境を整えたり、その為の支援をしたりする事で回復する場合もある。  このゲーミング障害の問題において、メディアが安易に「依存症」や「中毒」という言葉を用いる事に対し筆者は少なからず危うさを感じている。  視聴者や読者に「分かりやすく」という事かも知れない。「依存症」という言葉の社会的認知度に安易に寄り添っているだけなのかも知れない。そもそも何の意図や考えもなく発しているのかも知れない。  しかし問題が、社会的に重要であればあるほど、メディアは、その言葉の選択には気を付けなくてはいけない。 <文・安達 夕 @yuu_adachi
Twitter:@yuu_adachi
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