さて、冒頭の男性に戻ろう。「証拠あんのかよ」は、やましいことを自白しているに等しい。
不貞しているかどうかは、夫自身が知っているので、わざわざ証拠の有無を聞く必要はない。それを確かめようとする意味は2つ。①、証拠の有無を確かめ、シラを切れるかどうか考える。②、決定的証拠もないのに疑うなと妻をけん制するためである。
冒頭の夫は、飲み会や取引先の接待のはずなのに、しばしばシラフで帰宅する。「地方出張」の場合、尋ねても、誤魔化して、宿泊先を教えない。以前は忘れなかった帰るコールをして来ない上に、電話をかけても出ない。夜遅くや朝早く、「上司」から電話があり、突然の「休日出勤」を言い渡されて出かける。
ここまで怪しいと、妻がスマホを点検するのも当然だろう。夫のスマホからは、女性と二人きりで仲良さそうに映っている写真データが数点出てきた。観光地に遊びに行ったらしい。妻が、ツーショットについて問い質すと、「お前、俺のスマホを勝手に見たのか。プライバシー侵害だ」と怒り出す。
挫けずに追及すると、高校の同窓会で、2人切りではなかったという。同窓会の他の出席者の写真を見せてというと、夫は、妻の肩を掴み、真直ぐに妻の顔を見ながら、「俺の目を見ろ、信用しろ」と言った。
この夫は潔白か? 同窓会は本当か?
離婚や不貞の事例を30年間扱ってきた経験から、私は、断言できる。100%に近い確率で、同窓会は嘘であり、ここまでの嘘をつくのは、その女性と不貞しているからである。
この男性は、妻に君臨するモラ夫であった。多くのモラ夫は、チャンスがあれば、不貞し、風俗に通う。それは、女性を消費対象とみるからであろう。
そして、不貞が否定しきれなくなると、モラ夫は、怒り、妻に責任転嫁する。
「俺の苦労も知らないくせに」と怒り、はぐらかそうとする。「俺が浮気したとしたら、お前に魅力がないからだろ」と自らの不貞の責任を妻に転嫁する。
モラ夫の一部は、「悪かった」と謝り、「二度としない」と約束することもある。しかし、多くの場合、この謝罪は、表面的、形式的なもので、心からの反省ではない。謝罪した後に、不貞問題にまた触れると、「何度、謝らせるんだ!」と逆切れするのは、心からの反省がないからに外ならない。そして、遅かれ早かれ、浮気は再発する。
現在、先進国において、結婚・恋愛相手として、日本男性の評判は悲惨らしい。確かに国際結婚の相手国は、日本男性は、東アジア、東南アジアが断トツに多いが、日本女性は世界中の国の男性と結婚している。<参照:
”男性の国際結婚はアジア妻が8割、女性の相手国は多様”−Nippon.com>
「Chikan」が国際語になり、日本における性加害が広く世界に知られ始めている。観光客が増えているので、さらに周知のこととなろう。強姦犯人が捕まらなかったり、無罪が相次いだのも記憶に新しい。そして、日本男性が、驚くほどの男尊女卑(モラ夫)であることも、世界に知られている。
日本が、モラ文化を断ち切り、悪評を返上しない限り、日本に将来はない。
【大貫憲介】
弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『
入管実務マニュアル』(現代人文社)、『
国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『
アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし~モハメッド君を助けよう~』(つげ書房)。ツイッター(
@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中