近年まで多くの店が並び、毎週のようにイベントが開催されていた千里セルシー。
しかし、令和の世を迎えたこの5月、セルシー館内はそんな光景はまるで夢であったかのように静まり返っていた。そして5月31日からセルシーは殆どの区画が「閉鎖」となり、約50年に亘って親しまれた建物は深い眠りに就くこととなった。
セルシー館内各地に掲げられる「閉館のご案内」
閉館の理由は、端的に言えば「施設の老朽化」だ。
先述したとおり、千里ニュータウンは「日本初の大型ニュータウン」であり、セルシーも間もなく開業から50年を迎える。
セルシー閉館の動きが最初に明るみになったのは、管理者である阪急阪神グループが一部店舗に対して「老朽化のため契約の更新ができない」と通知したことによるものだった。
阪急阪神グループは、隣接する百貨店「千里阪急」も運営しているが、こちらも1970年開店で老朽化が進み、折しも建て替えが検討されていた。そのため、「セルシーが阪急建替えの巻き添えにされるなんて」と反対の動きも起きたという。その後、同グループはセルシーを保有していた特別目的会社(SPC)に15億円を出資することで、セルシーの建物自体を管理下に収めた。
千里阪急。こちらもまもなく築50年を迎える
そうしたなか、大きな転機となる出来事が訪れる。それは2018年6月18日に起きた大阪北部地震だ。
震度5強の揺れに襲われた千里セルシーは建物の損傷を理由に休館を発表。一部では「再開発を進めたい阪急側の思惑によるものだ」とも囁かれたが、建物には外から見ても分かるほどの亀裂が発生しており、セルシーは通路も含めて立ち入り禁止となった。
その後、セルシーは低層階の一部で営業を再開したものの、「老朽化」による危険性が現実のものとなったことで、大部分が営業を休止。核店舗であるダイエーも休業を続けたままだ。
「地震による営業休止」の告知が掲げられたままのダイエー千里中央店
そして、セルシーは地震から約1年を迎える2019年5月31日限りで館内の大部分や自由通路を閉鎖。6月からは飲食店5店舗、学習塾1店舗、パチンコ1店舗のみが残る状態となっている。阪急阪神ビルマネジメントは撤退交渉について「引き続き誠意をもって協議してまいります」としているが、再開発までの道はまだまだ遠いものと思われ、残念ながら当面は「廃墟を晒す」ことになる可能性もある。
かつて多くの人で賑わったセルシー広場からエレベーターシャフトを見上げると、最上階のデッキとの接続部分にはひび割れが見え、簡易的な保護ネットがかけられているのが見えた。
シースルーエレベーターの周囲にはひび割れが見え、下部にはネットが掛けられていた。地震以降、高層階の大部分は立ち入り禁止となっている